お仕事紹介

タクシーは目的地まで送迎するだけではないんです。
通常の送迎以外にもさまざまな乗務員のお仕事を紹介します。

観光タクシー

タクシーには、通常の送迎以外にも、貸し切りでお客様のご要望に合わせて観光地をめぐる、観光タクシーというお仕事もあります。
運転+観光ガイドという2つの役割を担う「観光タクシー」のお仕事について、詳しくお話を伺いました。

すばる交通株式会社 須賀 進さん

きちんとご案内しなくては、というプレッシャーもありますが、お客様に喜んでいただけて、自分もいろいろ見て楽しめるところが観光タクシーのお仕事の魅力です。

すばる交通株式会社

須賀 進さん(57歳)

観光タクシードライバー歴4年(乗務員歴15年)

取材日:2016年2月

観光タクシーのお仕事内容を教えてください。
基本的に時間単位の貸切料金で、お客様の要望のあったところをご案内するお仕事です。
 
お客様で多いのが、定年後にゆっくり東京を観光される60代後半のご夫婦や、お孫さんの結婚式で上京して、1日時間があるので家族で観光したいという方です。若いお客様は、少ないです。
東京スカイツリーや東京タワー、浅草寺、お台場、歌舞伎座、銀座、上野公園、葛飾柴又あたりが東京で人気のある観光地で、ほとんどのお客様がそこに行きたいということで、ご案内しています。
基本は、随伴してご案内しながら、というスタイルで、カメラマンにもなります。ご希望されない場合は車で待機したり、待ち合わせてといったケースもあります。
ガイドもする、ということは、観光地の情報収集が大変ですね。
私は自分で小冊子を買って勉強しています。休みの日にも、観光ドライバー仲間で時間を作って、お客様が行きそうなところに行き、実際に自分の目で見る、という勉強会をしています。こういう本だけだと、駐車場の場所とかも分からないじゃないですか。実際に行って、自分の目で確かめないと、お客様にお伝えできませんので。
お客様に失礼のないように、このような方法をとっています。

須賀さん私物のガイドブック
タブレットも駆使してガイドします。

観光タクシードライバーに資格などはあるんでしょうか。
東京の場合、「東京観光タクシードライバー(※1)」という認定制度があります。
これは「東京シティガイド検定(※2)」に合格し、「ユニバーサルドライバー研修(※3)」と「東京観光タクシードライバー認定研修」を修了した者のみが認定されます。2年ごとに研修があり、更新されます。
国際化に向けて、東京タクシーセンター主催の英語研修も受講し、修了しました。
観光中に何かあったら困るので、救命技能認定証も持っています。

※1 東京観光タクシードライバー認定制度:(一社)東京ハイヤー・タクシー協会主催
観光タクシードライバーに必要な基本的サービスや知識などについての研修

※2 東京シティガイド検定:(公財)東京観光財団主催
観光客に東京の魅力を紹介するために必要な知識の理解度を測る検定制度

※3 ユニバーサルドライバー研修:(一財)全国福祉輸送サービス協会主催
高齢者や障害者などの多様なニーズに適切な対応ができる乗務員を育成する研修

認定証がズラリ!

普段は、観光タクシーのお仕事だけされているんですか?
いつもは通常のタクシードライバーをしながら、ご予約のあった時間は観光タクシードライバーとして働き、終わった後に通常の業務に戻ります。
観光タクシーのお給料はどうなっていますか?
通常の業務の場合「売り上げの何パーセントが給料」というように歩合率が決まっていて、観光タクシーの仕事もそれと同じ計算です。
ただ、観光タクシーの場合は、3時間そのお仕事をすればきっちり収入がありますが、通常の営業では3時間走って1回もお客様を乗せられなかったら0円ですので、そこが違います。
日曜の都心を走ってもお客様がいないけれど、観光の仕事ならあるんじゃないかと言われています。
実際に土日祝日は観光タクシーの仕事をした方が売り上げが多いですよ。
 
観光タクシードライバーになろうと思ったきっかけも、正直なところ、最初は売り上げでした。
通常のタクシーの仕事では、土日祝日は平日に比べて売り上げが1~2万円下がるんです。
そこで3時間観光タクシーの仕事をすれば、1万5千円ほどの売り上げになるので、これだけでも収入が安定しますし、生活も楽になってくるかな、と。まずはそこから入ったんです。
観光タクシーの仕事を始めてからは「お客様と、こうやっていくと楽しいな」という楽しみを覚えて、それからどんどん興味を持って、現在に至っているわけです。
いままでで印象に残っているお客様は?
全盲のお客様がお一人で観光されるのをご案内したことがあります。時間は8時間くらいでした。
ご自身でスマホでおいしいお店を調べていらっしゃり、そこに行きたいというご要望がありました。
目が見えないので、腕につかまっていただき、食事もすべてご一緒しました。
その方の案内が一番勉強になりましたし、感動もしました。そのお客様が何で観光を楽しんでいるかというと、耳と鼻なんです。私たちが普通に目で見ていることを、その方は耳で聞いて「東京って人がすごいな」とか「車がたくさん走っているな」ということを感じていらっしゃったんです。それはすごく良い経験をさせていただきました。
観光タクシードライバーになるには何が必要ですか?
「いろんなものに興味を持つこと」です。
通常営業していても、ちょっと裏道に入ると、いろいろなものがあるんですよ。麻布十番あたりでは赤い靴の女の子の銅像があるんですが、モデルは横浜の山下公園にあるのと同じです。昔その女の子が麻布のほうに住んでいたらしくて。そういう、自分で「これなんだろう?」と興味を持つのが一番ですよね。
興味を持たないと、お客様に臨機応変に対応できないですから。
 
喜んでいただくことが好きな方にも向いていますね。
知識も必要ですが、それがお客様の望んでいることではなかった場合、押し付けになってしまうので。
お客様の要望をちゃんと聞いて、お客様にいかに喜んでいただけるかを考えることが何より重要です。
私も最初の頃は知識がなかったですけど、一生懸命さは伝わるわけです。
やっぱり一番は「対お客様」ですよね。
観光タクシーの良いところは?
近年人気のバスツアーと比較して観光タクシーをご利用された方もいるんですが、終わったときに言ってくださったのは「観光タクシーってすごいね」ということでした。バスツアーは大型バスなので止められる場所が限られていて、駐車場との距離を歩くだけで疲れてしまう。また、何十人というお客様の中でガイドが一人のため「今説明したのどこ?」となってしまう。それに比べて観光タクシーはどこでも入っていけるし、臨機応変に対応していただけるし、本当に楽しかった、と。そう言って下さるお客様が99%です。
価格も、3人で利用すればバスツアーと比較しても大差ないです。
また、バスツアーでも有名な食事処に連れて行ってくれますが、そこは有名店の中でも「大人数に対応できるお店」でしかないので、食事が好きな方は、観光タクシーで好きなところに行かれたほうがよいと思います。
ありがとうございました!

編集後記

休日も観光情報の収集に余念が無い須賀さん。
お客様に楽しんでもらうために、努力を惜しまない姿勢がうかがえました。
「観光タクシー」というサービスの魅力も、存分に伝わってきました!

取材協力

すばる交通株式会社

〒121-0836 東京都足立区入谷7-16-23

TEL:03-3857-6001 / FAX:03-3857-6006

HP:http://www.subaru-t.co.jp/

※掲載内容は取材当時のものです。