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ウエちゃんのタクシー日記/場外編  - ウエちゃん

15稿 「あんなぁ、ほんでなぁ、なんでやねん!」 2001.10.25

関西のタクシー運転手の殆どが聞いていると言うラジオ番組の中で、ウエちゃんの本がラジオドラマになった!ウエちゃん役はあの浜村節でお馴染みの浜村淳さんである。
   そのウエちゃん!大阪のタクシー運転手の間では一躍有名人になってしまった。
 一夜明けたら突然スターになった!…とはこの事である。
 本日一番のお客さんは、JR大阪駅まで送る観光でやって来たお客さんだった。
 ついでだから、そのままJR大阪駅前のタクシー乗り場に併設している待機場のタクシープールに入ってしまった。そもそも、これが間違いの始まりである。
 ここのタクシープールは、さぁ~何台ぐらい入るんやろかぁ?
 プール内は横6列の縦15列ぐらいだから100台前後だろうかぁ?
 しかし、外の進入路までタクシーが2列渋滞で100メートル近く溢れ返っている事があるので、ピーク時には200台ぐらいのタクシーが客待ち待機をしているはずである。
 ここは通常1時間から2時間もあれば確実に先頭になって、お客さんを乗せて走れるタクシー乗り場である。
 ここのタクシープールの事を大阪のタクシー運転手は通称『タコ壷』と呼んでいる。
 そう、タコ壷!一回後から入ったら何があっても前からしか出て行かれへんのである。
「ちょっと、ごめん!通してくれへん!悪いねぇ。」
 と言う逃げ道が一切無いのである。
 下手を打って変な時間に入ったら3時間も4時間もタコ壷の中で監禁される事もしばしばある。
 しかし、今の大阪は2時間も3時間も街を流しても一人のお客さんも見付ける事が出来ない時もあるので、タコ壷へ入る方が正解なのかもしれない。
 そんなタコ壷の中にウエちゃんは今、捕らわれているのである。
 ちょっと外から覗いたらタクシープールの中の進入台数がたまたま少なかった。待ち時間は1時間と踏んで入ってしまったのだが、その1時間がたっても半分も進んでいない。うぅぅぅっ!どないしょ?
 まぁ、気を取り直してタクシーの神さんがウエちゃんに与え給うた時間だと思い、タクシーの窓を四方全開にして秋の都会の風に当たりながら、カバンから原稿用紙を取り出して草稿を書き始めた。  もうその姿は正しく『走るモノ書き』そのもので凛々しいのである。(ホンマかいなぁ?)

 三台ほど向こうの待機タクシーからこちらに視線を感じながら、何か運転手どうしの話し声が聞こえて来る。
 よくタクシー運転手仲間から好奇心旺盛の人間国宝とまで揶揄(やゆ)されているウエちゃんが聞き耳を立てると……。
「おい!あいつが今朝、ラジオドラマになっとたウエちゃんやでぇ!本や原稿なんかでごっつい事、儲けてるらしいでぇ!その上にタクシーに乗って給料まで貰ろとんねん!あいつ!」
 と言うドスの聞いた品の無い声が聞こえて来た。
 チラッと流し目であちらを見ると、喋っている運転手はちょつとだけ顔見知りの運転手である。
(あっ!まずい!)……と一瞬色んな事が頭を過(よぎ)って行く。
 最近は口も聞いた事が無い顔も見たことがない運転手がそんな話を何処からか聞きつけて来て、
「カネ、カネ、キンコ!」
 と両手を広げて近づいて来る。
 ホンマは皆が思うほど儲かってへんねんけどねぇ。
 色々と経費と時間がかかるんやけどねぇ。そんなん誰も知りませんわぁ!
「へぇ~、あいつが今朝のラジオのウエちゃんかいなぁ?以外とブサイクやなぁ!」
(ほっといたれぇ!ボケェ!一発、殴ったろかぁ?)
 と内心思うウエちゃんなのであります。
「おぉ~い!ウエちゃ~ん!」
 と向こうの見ず知らずの運転手は辺りの事なんか構わず大きな声で、ウエちゃんに向かって呼びかけて来るではあぁ~りませんか!
「あっ、どうも、どうも!おおきにぃ!」
 と一応この瞬間は大阪を代表する文化人ですので品良く愛想をするのです。
(ホンマにアホくさぁ~!)
「今朝聴いたでぇ~!めっちゃ、オモロかったわぁ!」
「いやいや、どもども…、おおきにぃ!」
「後でなぁ、本屋へ寄って1冊買わせて貰うわぁ!」
「はははっ!どもども……。ポリポリ。」
「こらぁ~!ここで、ボォ~としとる運転手諸君!今朝、ラジオを聞いたやろぉ!こいつがあのウエちゃんやぁ!本をこぉ~たってやぁ!オモロイでぇ!読んだ事はあらへんけどぉ!」
 と初めて見るお節介な運転手が大声で待機場に響く声で宣伝してくれるではありませんか!嬉し~~ぃ!
(しゃぁけど、内心はちょっと迷惑……。)
 まぁ、こんなお節介なタクシー運転手が居てるのも大阪でんなぁ!
 ちょっと間を置いて、あちらからいかにもガラの悪そうな初めて顔を見るタクシー運転手が外又で肩をイカらせて、ミナミの極道のように歩いて来るではありませんか!
 まぁ、ホンでも大阪のタクシー運転手はガラの悪そうな運転手に限って親切で優しい運転手が案外多いので、ウエちゃんの本の事を聞きたいのかと思い此方もニコニコ笑顔で迎えると、
「おい!」
「あっ、どもども…!本の事でっかぁ?」
 とちょっと恐る恐る聞くと、
「ちゃう!」
 と一言だけ言ってウエちゃんを睨みつけるのです。
(なんか、嫌な予感するでぇ!)
 と思いながら、
「ほんなら、なんでっかぁ?」
 ともう一度恐る恐る聞くと、もぉ~びっくりぃ!
「儲ぉかっとるんやったら一週間だけ3万円貸せぇ!」
 あんなぁ、なんでやねん!(ドン!)


ウエちゃん

タクシー運転手と文筆の二足の草鞋を履く大阪のタクシー運転手
著書・・・
 『笑う運転手/ウエちゃんのナニワタクシー日記』
 『国道の西、夜明けのミナミ/ウエちゃんのナニワタクシー日記』
                    (両著とも…本の雑誌社より刊行)

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