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ウエちゃんのタクシー日記/場外編  - ウエちゃん

11稿 「『クルミパン』を食べた事ありまっかぁ~?」 2001.09.04

このサイトの辛口コラムの連載がタクシー業界の話題になって来た!
 『WEB本の雑誌』の連載一年分の一部を本の雑誌社から単行本で発売した!
 それをよりによって現役のタクシー運転手が執筆したと言う事でこれまた評判になってきた!ホンマに嬉しいことやねぇ!。もっと、ゆぅ~たってぇ~!めっちゃ、気分がえぇさかいにぃ!
 しかし、話題や評判と本の売れ行きとがなかなか比例しないのが現実の世の中である。連続テレビ小説のようにハッピーエンドとはなかなか行きそうにない。困ったものである!
 ウエちゃんの事がちょっと巷で評判になると、こぞってウエちゃんの周りに群がるのが欲どぉ~しぃ(欲張りな)タクシー運転手達である。
「なぁなぁ、ウエちゃん!こんなネタがあんねんけどどない?オモロイでぇ~!」
 と普段口なんか聞いた事がない運転手までもが、ウエちゃんが客待ちの合間にウトウトして白川の夜船に揺られているのに無理矢理タクシーのドアを叩いて言い寄って来る。
 しかし、そのネタの中身と言えばほとんどが程度の低い猥談であり、客の文句であり、会社や労働組合の不正のチクリばかりで全くもって面白くない!
 そして最後に必ず決まってタクシー運転手諸氏の口から出て来るいう言葉と言えば、
「どない?このネタ!オモロいやろぉ?なんぼくらいになんねやろぉかぁ?3000円ぐらいでこぉ~て(買う)くれへんやろかぁ?」
 と執拗に言い寄って来る。開いた口が塞がらず顎がはずれそうになる事ばかりである。
「あんなぁ、そんなに自分自信でオモロイと思うねんやったら、原稿に興して出版社に持ち込んだらえぇやんけぇ!」
 と言うと今度は、
「何をエラソーにしてんねん!えぇ格好すなぁ!」
 と罵声を浴びせて立ち去って行く。
 人が折角、昼寝をしようと思っている所にドカドカと無理矢理入ってきて挨拶も詫びも入れずに罵声だけ浴びせて去って行く。
「ホンマにタクシー運転手は……!」
 と思いながらふと気が付くと、ウエちゃんもそのタクシー運転手だったのである。エライ、すんまへん!

 タクシー運転手の話の中に時々ではあるが、流石(さすが)のウエちゃんをちょっとだけ笑わすネタが登場する。
 しかし、そんなネタのほとんどが、客と運転手の言い間違いや聞き間違い、見間違いの話ばかりである。そんな話は日本全国、タクシー運転手の数だけ何処にでも転がっているのでウエちゃんはほとんど関心がない!

   聞き間違いや言い間違いの話で
「こりゃぁ~、ゴッツイこと面白いんちゃう!」
 といつも思う話が一つだけある。
 既に、WEB本の雑誌の連載エッセイで書いた話やから詳しい事は書かれへんけど、一時は飛ぶ鳥を落とす勢いのタレントのトニー谷さんが大阪の某放送局の帰り際に貰ったタクシー券を握り締め放送局の社員に、
「伊丹までいい?」
 と聞いて
 「はいセンセ、アタミでもイタミでも…!」
 と放送局の社員が冗談で言ったら、ホンマに熱海までタクシーに乗って行ってしまった話は関西タクシー業界の正横綱級の話である。

 今日もちょっとだけ太目の体を揺らしながら、図々しさのフェロモンを四方八方に漂わせているナニワのオバはんが有り難い事に乗ってっ来た!
「運ちゃん!ちょっとお腹が空いたさかいに、さっきコンビニでこぉ~たパンをここで食べてえぇかぁ?」
 と突然に図々しさの見本市みたいな事を言って来た。
「かましまへんでぇ~、お客さん!」
 と日本一親切で優しい事を売り物にしているウエちゃんがニコニコ顔で言うと、
「おおきにぃ、運ちゃん!ほな食べさせて貰うわぁ!」
 とコンビニの袋をガサゴソとまさぐりクルミパンを取り出した。
「なんのパンでっかぁ?お客さん!」
「クルミパンゆぅ~て、書いてたさかいになぁ、めっちゃ珍しいやろぉ?」
 と運転するウエちゃんの目の前にオバはんはパンを差し出すのです。
「ほんまでんなぁ!クルミパンでっかぁ?珍しいでんなぁ!どんな感じでっかぁ?」
 と聞くが、
「モグモグモグ……?」
 オバはんは何も言わない!
「どうでっかぁ?お客さん!美味しぃでっかぁ?」
「………??」
「お客さん、どないしましたん?」
「クルミの味が全然せぇ~へんねん、運ちゃん!普通のパンの味やねん!おっかしいなぁ~?」
「お客さん!ひょっとしてそれ、パチもんちゃいまっかぁ?」
 大阪ではニセモノの事を『パチもん』と言い、ブランド商品のニセモノばかりを売っている店の事を『パチもん屋』と言う。
「パチもんやろかぁ!運ちゃん?」
「お客さん、いったいそれ何処の製品でんねん!ちょっと見せてくれまへん?」
「ほんなら、はい、これぇ。ちょっと食べてみてぇ、運ちゃん!」
「へぇ~、おおきにい!(モグモグ)」
「どない?」
「ほんまでんなぁ、お客さん!クルミの味は全然しまへんなぁ?」
「そぉ~やろぉ~!運ちゃん!やっぱり、パチもんやろかぁ?」
「確かにラベルのシールはクルミパンゆぅ~て…ん?ん~~?あれぇ~~??」
「どないしたん?運ちゃん!」
「お客さん!これよぉ~見なはれ!どぉ~書いてますぅ?ココ!」
「……!?ミルクパンやないの!それがどないしたん?運ちゃん!」
「もぉ~、一回!商品名は?」
「ミルクパン!……?えっ~~~~~!!」
「もぉ~、お客さんとやっとれんワイ!」(チャンチャン!)


ウエちゃん

タクシー運転手と文筆の二足の草鞋を履く大阪のタクシー運転手
著書・・・
 『笑う運転手/ウエちゃんのナニワタクシー日記』
 『国道の西、夜明けのミナミ/ウエちゃんのナニワタクシー日記』
                    (両著とも…本の雑誌社より刊行)

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