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ウエちゃんはコテコテの大阪のタクシー運転手なんやねぇ。 それもコテコテを3乗(3倍とちゃうでぇ!)したよぉ~な下町を専門に流す『けつねうどん』と『たこ焼き』と『551の豚まん』と『阪神百貨店地下のいか焼き』が 大好きなコテコテのなにわのタクシー運転手なんですわぁ。いや、ほんまぁ! ウエちゃんが書く話には、しょっちゅう大阪のオバハンが登場しまんねん。 大阪のコテコテのオバハンのネタを書かせたらウエちゃんの右に出る者はいてへんと思ってますねん。その代わりに左から出てくる奴はぎょ~さんこといてるらしいんやけど……。 えらい、すんまへん! 大阪のオバハンのネタは、タクシー運転手とモノ書きを兼業しているウエちゃんの得意分野なんですわぁ。
大阪のオバはんが厚かましくて図々しい事なんかは、もうテレビなんかの各マスメディアで全国的に有名やからよぉ~知ってはりますわなぁ?知ってはりますやろぉ? しゃぁけど、実際はあんな生易しいもんとちゃいまっせぇ! ウエちゃんの周りでも何人の他府県からやって来た出稼ぎタクシー運転手が、大阪の厚かましいオバはんに虐められて泣きながら田舎へ帰ったやら……。 ほんま、可哀想な話しは山のよぉ~にありまんねんけどねぇ。又、いずれ……。
大阪は東映の極道映画やVシネマに出てくるようなヤクザがウロウロしている街である。ちょっと人相が悪い派手な服装の客を乗せると、十中八九は極道様御一行である。
「お客さぁ~ん!ひょっとしてぇ~極道でっかぁ?」 と興味津々に聞くと大阪のヤクザはなぜか喜んで 「おっ!運ちゃん、解るけぇ~!嬉しいのぉ~!大当たりやぁ!がっはっはっ!」 などと言って上機嫌になる。ほんまに大阪はけったい(おかしい)な街である。
特にウエちゃんは大阪市西部の浪速区や大正区の下町の路地裏や、港区や住之江区の港湾地区を専門に流しているので、一日に4~5回は必ず極道か似非ヤクザが乗ってくる。
そんなコテコテの街大阪でタクシー運転手をやっていると 「極道が恐い!」……と言ってタクシー運転手を辞めそぉなものなんやけどぉ、そんな運転手はあんまり見た事も聞いた事もあらへん。 前に一回だけぇ、沖縄から出稼ぎに来た運転手が 「ダメさぁ!阪神高速は恐くて、もぉ~乗れないさぁ~!ちょっちょねぇ~!」 と言って泣きながら南港からフェリーに乗って沖縄へ帰る運転手を、別れのテープを握り締めながら同僚と大笑いして見送った事がある。
「そんなん言いますけど、もぉ~、大阪のオバハンんが、めっちゃ恐いんですわぁ~!お願いですから辞めさせてくれまへんかぁ!」 と言って辞めていく運転手は、日常ちゃめしごとなんやねぇ。
そんなこんな毎日が楽しいタクシー運転手をやっていると、喋りで人十倍でしゃばりのオバハンが乗って来て、こちらの体調なんかお構いなしに一方的にペラペラ話し掛けて来る。
「運ちゃん!最近景気はどない?アカンやろぉ?」 「はぁ~、もぉ~さっぱりあきまへんなぁ!」 「あんたぁ、タクシー運転手なんかやったかて今日日(この頃)給料にならへんのんとぉ、ちゃうのぉ?」 「ほんまですわぁ!」 「ぎょぉ~さんこと子供抱えて嫁はんに食べさせて貰ろてんのとちゃう?」 (ほっといたれやぁ!オバハンなんで人の家の事情を知っとんねん!) 「はははぁ!お客さん、当たりぃ!ほんまあきまへんわぁ!わっはっはっ!」 「なぁ~!あんだけ景気が良かったのにバルブが弾けたしなぁ、そう思わへん?運ちゃん!バルブが弾ける前はごっつい事良かったんちゃう?」 (オバハン、アホちゃうけぇ!バルブが弾けたら街中水浸しやんけぇ!) ……といつも思いながら、オバハンの股間に蹴りを入れてるんはウエちゃんだけやろかぁ?
しゃあけど、こう言う時も決して大阪のオバハンには逆らってはいけないのである。 もし逆らって……
「お客さぁ~ん!バルブでっかぁ?はっはっはっ!バブルの間違いちゃいまっかぁ?」 などと言うと、オバハンはその日のうちにウエちゃんのタクシー会社やタクシー近代化センターへ 「あんたとこのなぁ、恐い顔の太ったぁ運転手!どないなってんのぉ!えぇ~!美人のアタイに口ごたえしょんねん!あんな生意気な運転手、 すぐクビにせぇ~へんかったら町内会で不乗運動するでぇ!」 とすぐに苦情の電話を入れて来る。タクシー運転手の立場は非常に弱いのである。客に対しては何時もイエスマンやないとアカンねやねぇ。
「ワレェ~、赤信号で何で止まんねん!ボケェ、コラァ!行ったらんかぁい!行ったらんかぁい!インから入ってエンジン蒸かして外から捲らぁんかぁ~い!」 と無茶苦茶ヤタケタを言う漫才師さんが昔、大阪にいたのを思い出す。 ほんまにタクシー運転手は見掛けよりしんどい仕事ですわぁ!
今日も今日とて、This is 大阪 丸出しの買い物帰りの下町のオバはんが、買い物篭からネギと大根の頭を出して雨の中、1キロほどの近距離を傘代わりでのご乗車である。
「運ちゃん!もぉ~、うちなぁ、風邪ひいて熱があんねん。どないしょ?」 「そら、あきまへんなぁ!お客さん。熱計りはりましたぁ?」 「まだやねん!運ちゃん!」 「早い事熱計って病院へ行って、解熱の注射でも1本こ汚いおいど(お尻)に打って貰ろぉ~たほうがえぇんとちゃいまっかぁ?」 「浣腸はされへんやろかぁ?運ちゃん!そんなんされたらウチ乙女やさかいに恥ずかしいわぁ!」 「オトメ…誰がぁ……?」 「……………」
「運ちゃん!最近のなぁ、体温計あるやんかぁ?」 「新しいやつでっかぁ?」 「そぉ~やねん!あれアカンなぁ。表示がデジタルやろぉ。あれアカンわぁ!」 「デジタルの表示が見難いんでっかぁ?乙女が老眼でぇ!」 「誰がやねん、運ちゃん!」 「ほんならなんですのん?」 「やっぱり体温計は昔ながらの水銀が上へ行ったり下へ行ったりするアナグロがえぇなぁ~。アナグロが見易いと思わへん?運ちゃん!」 「はぁ~?アナグロ…?えっ…!穴黒…?でっかぁ~?」 「そうやねん!時計かてそぉ~やでぇ。デジタルよりアナグロの方が使い易いんやでぇ。運ちゃん!アナグロの方がぁ!そぉ~思わへん?運ちゃん!」
(それを言うなら、アナログやろがぁ~!乙女のオバはん!) と一発言いたいんやけど、大阪のオバハンに口ごたえしようものなら、鼻の穴に指を突っ込まれ引き摺り廻されてほんまに穴黒になってしまう。 この場はもうアナグロと言う事で、黙って見過ごす事にしたタクシー運転手のウエちゃんなのであります。 あぁ~~ぁ、しんどぉ!
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●ウエちゃん
タクシー運転手と文筆の二足の草鞋を履く大阪のタクシー運転手 著書・・・ 『笑う運転手/ウエちゃんのナニワタクシー日記』 『国道の西、夜明けのミナミ/ウエちゃんのナニワタクシー日記』 (両著とも…本の雑誌社より刊行)
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