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平成徒然草 - 坂本 互(さかもと わたる)

15稿 「2001年を振り返る」 2002.01.22

たまたま一番前に居あわせただけなのに、 突然「お前100人の総代になれ」と言われたら誰でも「何故私が」と驚くだろう。 2001年はまさにこのような立場にあった。 「21世紀最初の大食いチャンピオン」など、昨年中はつまらないイベントにもこの大層なタイトルを付けることが流行った。 おそらく世界中の経済の停滞や暗い世相を一新する華麗な幕開けを期待する気持ちがそれだけ大きかったからかもしれない。 しかしその出来事の殆どは、世紀を超えて語られるようなものではなかった。
 毎年、初詣に行くと妻は必ず高嶋易断の暦を買う。そして家族一人一人について今年の運勢はなどと丹念に読んで一喜一憂している。 一年の運勢だけでなく、毎月のようにどちらの方角が良いとか調べている。 昨年は家族全員の中で良い運勢の者は誰も居なかったが(あたっているが、日本人みんなそうかも?)、今年は全員が良いとのご託宣である。 私の歳では良くても悪くてもあまり変わりはないが、家族とりわけ子供達の運勢については良いと云われると 「どれどれ」と見る気になる。この辺が易学が廃れない原因だろう。

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 昨年の干支は、辛巳(かのとみ)であった。 辛
「辛い、厳しい、闘争、新」→辛もまた新なり→革新
伏在していたエネルギーが矛盾、抑圧を排除して、上に向かって発現する
改めるより断固実行し、難事を乗り切る・・・・・・断固実行


「蛇、止む、終、蠢動、起」→新たに始まる→回復
潜在していた政治、経済、人事等の問題が続々と表面化、活動
物事が一旦終結し、新たな出発が始まる・・・・・・従来の因習打破

前年にかけての大きな政治、経済、軍事、気象、人事等が今年はいよいよ顕在化し、新たなエネルギーが動き出す
断固実行して、多少の犠牲覚悟で事を改める年
-革新の年(断固実行の年)-
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 上記は(株)岩崎の社長さんのコラムから拝借したもので、大変よく当たると評判の大先生のご託宣である。 一年が終わって改めてじっくり見てみると、まことに当たっているから不思議だ。 当然のことながら、この卦の内容は去年の初めに発表されたものである。
 同時多発テロ、日本の狂牛病発生、小泉内閣の成立などはいずれも、前世紀にその原因が伏在していたもので、 いづれも今後解決には長年月を要する問題である。
!!!それにしても大きな蛇が飛び出したものである。!!! 今年がどんな年になるか知りたい方は http://www.iwasakinet.co.jp/index.html へどうぞ。

 アメリカでの同時多発テロのショックは、これまでのテロの概念をがらりと変えてしまった。 大勢の旅客を乗せたままの民間旅客機を爆弾として、民間の摩天楼に激突させた結果、現代のバベルの塔の崩壊とも言うべき多人数の犠牲者を出した。 北アイルランドのテロでは約30年の間に3000人の犠牲者が出た。 多数の戦闘機が参加したハワイ真珠湾の攻撃でも犠牲者は2500人である。 今回の死者の数はそれを上回ることは間違いない。しかもその生の情景を世界中の人がテレビで見せつけられたのである。

 その後もこの映像は、これでもかこれでもかと繰り返し流されている。 普通なら「もう、いいかげんにしてよ」と、チャンネルを他に切り替えれば済むことのはずが、 まるで蛇に魅入られたように、その都度映像に引き込まれてしまう。 アメリカの精神学者が幼児にPTSDの症状を起こすと警告していたが、私にはすでに麻薬のような効果を生じさせている。 今度の事件では生々しい死体の映像がないのに、何故このような強烈な印象を感じるのか不思議でならない。

 今までのハイジャックでは少人数で一機を乗っ取り、乗客を人質にとって何らかの要求をするというケースが多かった。 今回はナイフ程度の武器で航空機の操縦権を奪い、乗客諸共自爆することを最初から目的としている。 しかも4機を目標とした同時行動であり、その組織力と非情な指令を命令できるカリスマ性に世界中が恐怖を感じている。 アメリカが最も警戒していたミサイルでなく、相手国内で簡単に調達出来る爆弾で、少人数でも多数の犠牲者を出すテロが可能なことを証明してみせたわけである。

 今や、アメリカは世界最強の軍事力を背景に、世界経済の支配者として地球に君臨している。 今回のテロではペンタゴンと世界貿易センタービルが破壊されたが、テロの本質的意義はそれらの建物が象徴していた「世界帝国としてのアメリカの自負と誇り」が 打ち壊されたことにある。事件のあとブッシュ大統領はこれは戦争であると宣言し、犯人に対してすばやい報復を誓った。 ところが実行犯人は全員玉砕しているのだから、戦争はテロを計画した組織に対するものとならざるをえない。

 テロとは何ぞやについてはっきりした定義はないが、いいテロと悪いテロという区分けはあるのだろうか、そしてそれを誰が判定するのだろうか。 力が釣り合った国同士の争いであれば戦争になるが、普通は双方にそれなりの大義名分がある。 あまりにも力の差がある国や民族の間ではゲリラ戦かテロ以外に戦うすべがない。 強者の論理では弱者は常に悪とされるが、世界の歴史では弱者に理を認めるケースも少なくない。 その場合でも最低限守らなければならないルールがあるのではないかと思う。

 事件に対し喜びの声があがったのは、パレスチナだけでそれもすぐかき消された。意外だったは、北朝鮮を始め今までアメリカに批判的なアラブの国々までも 犯行を非難する声明を出したことだった。このような情勢下では、流石に犯行声明を出す組織は現れなかったが、ビンラディンとその組織アルカイダが犯人として 指名手配された。

   それからはもうブッシュ大統領のやりたい放題となった。テロに味方するかアメリカを支持するか二つに一つと云われては、 もう何も云えない。大統領の十字軍発言という勇み足もあったが、どうやら宗教の争いになることだけは避けられた。超大国アメリカが怖いこともあるが、 やはり今回のテロが常軌を逸したものだという認識が強かったのではないか。

 アメリカは約束の地を求めて、世界中から移住してきた様々な人種が作り上げた国家だが、事件後は国民としての団結心が急速に高まり、 星条旗が国中に溢れた。ブッシュ大統領の支持率は空前の高さとなり、マスコミも事件前のように大統領を揶揄の対象とすることはタブーとなった。 北から南から色々な人種が移り住んで日本民族が形成されたように、このようにことを繰り返して2000年もすれば、 アメリカ民族なるものが形成されるのかもしれない。

 3ヶ月以上も空爆が続き民間人の被害が報道される度に、流石に私もアメリカはやり過ぎではないかと感じたが、その都度あの突入の映像の方が勝ちを収めた。 それにしても今度の事件に殆どのアフガンの人達は全く責任がないのに、空爆で死んでいかなければならない不条理が悲しい。 アフガン人はとても誇り高く勇敢だが、9世紀の部族国家の価値観の中で生きている。いけない事とは判っているのだが、 私にはどうしてもアメリカ人とアフガン人とが同じ命の重さを持っていることを実感できないでいる。

 動物の中で報復という行為は人間以外には見られない。人類の報復の歴史はとてつもなく古く、有名な 「目には目を、歯には歯を」の文言は、紀元前18世紀の古代ハムラビ法典に遡るものである。 これが旧約聖書のモーゼの啓示に取り入れられ、コーランにも同じ規定がある。
「報復という情熱は人間の遺伝子の中に組み込まれているとしか思えない」と作家の曽野綾子さんがそう書いている。 この条文の趣旨は「被害者側の過度の報復を抑えるのが狙いだった」と曽野さんは解説している。

 年末になると必ず忠臣蔵が上演されるように、日本人も報復劇が嫌いではない。しかしその根拠となる考え方は宗教的には大きな違いがある。 外国人は日本人の殆どが仏教徒だと思っているが、その倫理感は仏教でなく朱子学に根ざしていることを知らない。 報復は主君の仇であり、親の仇に対してである。浅野匠守が刃傷に至った原因は未だに不明であるが、 正当な理由があれば誰かが知っていた筈である。現代ならばさしずめ精神鑑定ものであろう。

 最近になって,テロを本当に無くすためには、「何故こんなにアメリカが憎まれるのか」についての反省や分析が必要だという意見が出てきている。 しかし、その声は世界的にみてもまだ少数派である。
 反対に現在、ウサマ・エキュスキューズといわれる現象が世界中に広がっている。アメリカの報復戦争に便乗して国内のテロ勢力や過激分子を抹殺しようとする行動 である。その結果として、パレスチナを始めとして、世界各地へテロが飛び火し、報復の遺伝子が世界中で燃え盛るのではないかと心配である。 本来このような時に立ち上がるべき宗教界は、ただ傍観しているだけである。

 作家の大江健三郎氏はこの事件について次のように述べている。 『「昨年、都市文化、国際関係、政治や経済の「象徴」ともいえる世界貿易センターが崩壊した。 「20世紀都市文明の全体性と崩壊」を感じ、そういう形で21世紀が始まったのならば、我々の滅びの日は近いと、暗い気持ちになった。 再建の思想が必要だが、おそらく僕は新しい希望を確信することなく死ぬだろう。しかし、これから育つ子どもには、 崩壊の向こうに新しい文明、新しい文化があると信じてほしいし、そのために正義の戦争はありえないと意識してほしい。』」


第14稿 「ディズニーシーと浦安市(2)」 も読んでみる

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坂本 互(さかもと わたる)

元タクシーサイト代表取締役社長、現在タクシーサイト顧問
元タクシー問題懇談会会員
元イースタンモータス常務
株式会社システムオリジン顧問
東京におけるタクシー向けコンピュータシステムの草分け的存在

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