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1000万人がまとまれば、小さな国か民族になる。千葉県には年間でそれを上回る人が集まるところが4個所もある。 多い順に、成田空港、TDL、成田山新勝寺、幕張メッセである。東京ディズニーシー(TDS)のオープンで、この順位が替わるかもしれない。 TDSだけで年間1000万人の入場者が見込まれており、TDLと合わせて少なくとも年間2500万人以上がディズニーリゾートを訪れるものと予想される。 それだけに地元では、徹底した渋滞対策が必要とされていた。 今回は交通のメインとなる舞浜駅は大改築された。 交通バリアフリー法に合わせてホームの真中と南口改札を出たところの2箇所にエレベーターが新設された。 見ていると、車椅子の人はそれほど多くないが、ベビーカーの親子連れには大人気である。 ホームへの昇降階段は倍増されて4箇所になり、エスカレーターは1基から4基に増えた。さらに地元住民のために新しく北口改札が設けられた。 これで朝晩に、通勤客はディズニーのお客と揉み合いをしないですむようになった。 リゾートを一周するモノレールも出来たが、これは輸送力というよりミッキーマウスの窓を楽しむお子様向けの乗り物という要素が強い。このほかに、浦安駅への直通バスの復活も計画されている。
ディズニーでは出来るだけ電車を利用するように宣伝しているが、少しでも交通費を節約しようと多人数で来る他府県ナンバーの車が多い。 帰りの車は両パーク合わせて最大で1時間当り4800台に達すると予想された。 その半分が首都高速湾岸線の葛西入り口に向かえば、同入り口がパンクするおそれがあり、それを分散するために東京方面への「舞浜入り口」が作られた。 この建設費約27億円はオリエンタルランド社が負担したそうだ。
浦安市も周辺の道路で路面を新工法の騒音を減らす舗装に換えたり、住宅街との間に防音壁を設けたりした。壁は刑務所の塀のようにかなり背高だが、 透明の材料を使っているので圧迫感はない。駅から帰宅の途中、歩いてその効果を確かめてみた。 壁の内側の公園では、ものすごい鈴虫の合唱である。京都のお寺で雅楽を演奏したとき、尺八や笙の音に鈴虫が反応したという話を聞いたことがある。さすれば防音壁は成功というべきか。
このあたりの住宅街は、12月になると一斉にクリスマスの電飾を競う浦安の新名所である。テレビでも紹介されて、今では遠くから見物客が車でやって来る。 今年もこれからが見頃となり毎日の帰宅が楽しみとなる。もともとこの住宅街では一年を通じて、家ごとに花を絶やさずに道行く人の目を楽しませて来た。 一軒で始めたクリスマス飾りが隣近所に広がって、年々豪華になって行く。中でも電気代だけで一ヶ月何十万円もかかるといわれる邸には、大きな犬小屋にも飾り付けがあり、 次々とアマチュアカメラマンが三脚を据える順番を待っている。
さて、TDS招待の日は風が強く8月とは思えないほど涼しかった。入り口では身分のチェックもなく入場券と交換してくれた。ゲートを入っての第一印象は、随分池(海?)が多いなというものだった。 左手にテレビで紹介していたお酒がのめる船のレストランが見えた。まさか朝からビールでもないだろうとぶらぶら歩き始めた。 TDSは埋立地に建てられたのに、園内はディズニーには珍しく、かなり高低差を持った設計となっている。初めてのこととて何処に何があるのか皆目見当がつかないが、人の流れは火山の方に向かっている。
坂の途中に長い行列ができていたが、先頭がどこなのか分からない。並んでいる人に尋ねてみたが何の行列かみんなも分からないらしい。まるでソ連邦だねと皆で大笑いした。 今なら週刊誌にも「TDSの攻略法」などが載っているが、その時は入場する時貰ったパンフレットだけが頼りである。 今までの経験では、アメリカでも日本でも、がらがらにすいているディズニーランドを見たことがない。ディズニーへ何回か来ると皆、 あくせくしないことを習得するようだ。ディズニーはアトラクションを見なくても、ただ歩き回るだけでも楽しいように作られている。どうせ一日では全部回りきれないのだし、又今度来る楽しみを残すことになる。
最初は何処にどんなアトラクションがあるのか、パンフレットで勉強の時間が必要だ。並んでいる他の人達も、回りの景色と地図を見比べながら研究しているようだ。 我々もこの勉強グループの仲間に入れてもらうことにした。 TDSの面積は約48ヘクタールとTDLとほぼ同じで、活火山を中心に回りに7つのテーマ寄港地がある配置もTDLと似ている。 しかし、そのうち9ヘクタールを水面が占めているため、収容人数はTDLに比べて少なくなる。 そのためか当日は何処でもがあふれる程の人がいて行列また行列で、おそらく半分近くは待ち時間で費やされた感じがする。
行列の中で待っている間、周りの人々を観察するのも面白い。よく見ると独りだけで来ている人はまず見当たらない。市民招待日なので家族連れが多いのは当然だが、若いアベックも多く特に目に付いた。 ディズニーランドは「人は孤独では生きられない」ということをしみじみ教えてくれる場所である。ディズニーランドへは絶対に一人で行ってはいけない。恋人同士でなくてもよい。必ず誰かと一緒に行かなければならない。
恋人同士なら”待ち”そのものが楽しみの時間となる。周りにバリヤがあるように二人だけの空間が出来てしまう。扇大臣は「男が優しいのは結婚前だけ」と云うが、 それにしても現代の男の子は大変である。ジュースやアイスクリームを買いに行ったりして、実にまめまめしくサービスをしている。 その姿は雌鳥を獲得するために努力する雄鳥に似ている。道理で最近は若い男の子が、茶髪にしたりお洒落をしてきれいになるわけである。 ディズニーの統計では、一緒に来園まで漕ぎ着いたカップルはゴールインする確率が急速に高まるそうだ。ディズニーランドは日本の人口維持に貢献していることになる。
そのうち、どのアベックも男の子が彼女を放ったまま30分位居なくなるのに気が付いた。彼女に尋ねると、火山の反対側まで次のアトラクションの予約に行ったという。 オーランドでもやっていたFarstPassSystemを日本でもやっていたのだ。オーランドのディズニーランドは日本ほど混んでいないが、 それでも人気のあるアトラクションは長い行列ができる。このシステムを利用すれば、一日に2つは目玉のアトラクションを待たないで観ることができた。
午後2時ごろにやっと、人気のインディアナジョーンズに辿り着いて、ファーストパスを試してみた。なんと夜の8時30分と書いてある。係員にこれでは閉園の時間を過ぎてしまうと抗議したら、 「今日はお客様の居る限り徹夜でも動かします。」という返事が返ってきた。やはりどんな良いシステムでも、それが効率よく機能するには限界があるのだなということが判った。 ふと、このシステムを病院の外来に応用できないかと考えてみたが、病人が暇をつぶす場所がない。それではタクシーの駅待ちにはどうだろうか。これなら順番が来るまで、 付近の流し営業ができるし近距離も歓迎となる。
7つの海を結ぶ遊覧船に乗ると、東京湾の方向に有明湾の締め切り堤防のように茶色の塀が続いているのが見える。 前稿で触れた「ホームレスのバラックをどう隠すか」の解決法がこれだなと思った。それにしても真中あたりが破れて水が吹き出しているのは何だろう。 ところが後日、朝日新聞の特集「進化するパーク」に本当の答??を見つけた。
『TDSの中には、いくつか東京湾を見渡せる場所がある。内部の水面と外側の東京湾が同じ高さに見えるように工夫され、 東京湾を借景にして、海の広さを体感できる。海側の壁には、常時水を噴き出す水門が備えられ、東京湾から水が流れ込んでいるように錯覚させる仕掛けになっている。このような工夫は、 オリエンタルランド社が米国・ザ・ウオルト・ディズニー・カンパニーとチームを作り、意見を出し合った結果、生まれた。どうしたら「海」というテーマでうまく演出できるか、何度も案を練ったという。』
人の不幸を横目で見ながらでは、遊園地を心から楽しむことはできない。そこで考えられた人目隠しにもこれだけの物語を用意する。 これこそウオルト・ディズニー流の対処法だといたく感心した。それに引き換え、お手並み拝見などと言っていた自分の野次馬根性や想像力の貧しさに忸怩たる思いである。
浦安市では来年の成人式をTDLで開くと発表した。1850人の新成人の中から市が公募した成人式実行委員の4人が「浦安でしかできない成人式を」と発案したものだ。 松崎秀樹市長は「社会人になる節目として成人式は必要だが、格式ばるとかえって騒然となってしまう。浦安でしかできない成人式で、心に残る一日になれば」と話している。 今度の新成人は、TDLとほぼ同じ頃に生まれ育ってきたことを考えると、紆余曲折があったがディズニーパークは市民の心に定着したように感じる。できれば、同じような老人式もやって欲しいものだ。
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●坂本 互(さかもと わたる)
元タクシーサイト代表取締役社長、現在タクシーサイト顧問 元タクシー問題懇談会会員 元イースタンモータス常務 株式会社システムオリジン顧問 東京におけるタクシー向けコンピュータシステムの草分け的存在
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