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かねてから千葉県はJRに対し、 貨物線として計画された京葉線を旅客線に変更するよう要請していた。 東京ディズニーランド(TDL)がオープンして5年後の1988年、待望の新線・JR京葉線が部分的ながら開業することになった。 浦安市内には「新浦安」と「舞浜」の2つの駅が出来ることが発表された。 「舞浜」はディズニーランドの本場フロリダ州のマイアミ・ビーチからとったネーミングである。 実際にはディズニー・リゾートはマイアミ市ではなくオーランド市にあるので、「舞浜」というのはおかしいのだが、殆どの日本人にとってフロリダと云えばマイアミであろう。 建設中の仮称「西浦安」では味もそっけもなく、「舞浜」には天女が降りてきそうな夢がある。 本当はJRとオリエンタルランド社は駅名を「ディズニーランド」にしたかったのだが、米国ディズニー社の許可が下りなかったそうだ。 JR当局は一市一駅の原則から快速停車を舞浜駅に絞りたかったらしい。 浦安市はどちらに停ってほしいかを市民にアンケートで尋ねた。 市民の殆どが新浦安を選び、作戦は大成功で、両方共快速が止まる事になった。 かくして浦安市は地下鉄と合わせて3つの快速停車駅を有し、首都高速道路のインターもあり、もはや陸の孤島の汚名は完全に返上した。 車でも電車でもどこに行くにも、こんなに便利なところはない。前の年にすでに人口は10万人を突破していた。
京葉線開通に合わせて、舞浜のホテル群が誕生したが、この用地はすべてオリエンタルランド社が分譲したものである。 前稿でも一寸触れたが、県議会で黒い噂が問題になり、安く払い下げられた土地を他人に転売することは禁じられていた。 話は一寸それるが、オリエンタルランド社はTDLの売上について、一定割合の指導料をディズニーランド本社に納める契約を結んでおり、 売上には直営ホテルの分も含まれる。指導料をとられてはホテル経営は成り立たないということで、 ホテル用地分譲が許可されたそうだ。ともかく、土地の譲渡益で多額の借入れ金を軽減することができたのが、オリエンタルランド社の経営が成功した原因の一つであることは間違いない。
浦安のホテル街はテレビのトレンディドラマの格好の舞台となり、市のイメージが又一段と上がった。 海上から見る花火に映えるホテルのシルエットは外国の風景を観るようで、東京湾の遊覧船は毎晩8時半頃これを目指して集まってくる。 ここで一つ忠告。今でもよく、浦安の不動産の広告で「ディズニーランドの花火が見えます」という殺し文句を見かけるが、これに乗せられてはいけない。 住んでいる人にとって、365日の花火は綺麗よりうるさいだけとなることもある。ともあれ、若者には人気の高い街となり、「どちらにお住まいで」、「浦安です」、「良いところにお住まいですね」と言われるようになった。
当時地価のバブルが進行していたが、特に浦安は大きかった。 一時は私もふわふわと舞い上って億万長者気分でいたが、その喜びもつかの間、バブルと共にはじけとんでしまった。 余談であるが、浦安市にはいち早くコンピュータシステムを導入した市民利用率が日本一の図書館がある。 この頃、地方の自治体からこの新鋭図書館の視察が相次いで、専門の説明員が必要になった。本当は何の視察かは言わずもがなだが、国会や地方議員の海外視察に比べればかわいいものである。
京葉線の駅前計画はどこもしっかりしているが、特に舞浜駅はシンデレラ城をモデルにデザインされたといわれおとぎの国にいるような気分になる。 JR、浦安市、オリエンタルランド社に学者を加えた検討委員会で練り上げた計画に基づいて建設されたと聞いている。 ディズニーランドは駅から延びているゲートウェイを降りていってすぐの所にあり、舞浜駅はまるでTDLの玄関そのものである。
それでも私のような通勤客から見ると不満な点がないではない。 1.乗降客の人数からみて駅員があまりに少ない。 2.ホームに通じる階段が2箇所しかない。 3.エレベーターが設置されていない。 車椅子の援助要請があると駅員が3人掛りとなり他の業務がストップしてしまう。 休日は他駅から応援が来るようだが、この点では欠陥駅であり、今まで大きな事故がなかったことがむしろ不思議である。 夏休みや連休には、駅の改札出口付近は待ち合わせする若い人たちであふれ、帰りは階段の降り口を塞いでしまう。 我々一般客はそれを掻き分けて、ホームに上がり降りするのが一苦労だった。どうしてTDLから整理の人を借りないのかいつもこぼしていた。
2年後に京葉線が東京駅に乗り入れると、西船橋止まりだった武蔵野線も京葉線経由で東京駅まで直通運転するようになった。 早速、東京駅へ行ってみて驚いた。他の線に乗り換えるのに、上がる上がる歩く歩く、優に一駅分はありトロッコにでも乗りたくなる。 実は、この地下ホームはまぼろしに終わった成田新幹線用に準備されたものだったのである。 この沿線にはイベント・レジャー施設が多く建ち並んでいる。 葛西の臨海公園、舞浜のTDL、南船橋のスキー場ザウス、海浜幕張の幕張メッセなどが代表的で、まさしくウオーターフロントラインである。 大きな荷物を持ったり、小さな子供を連れた乗客が多い。 エスカレーターや動く歩道は設置されているが、あたかも広大な空港の中にいるようで、とても鉄道駅の設計思想とは云えない。 ピラミッドの中を斜めに昇降する、ラスベガスのルクソールホテルのエレベーターでも設置したら、東京駅の京葉線は東京新名所になること請け合いなのだが。
京葉線ができるとTDLへの人の流れは大きく変わって、地下鉄浦安駅からの観光客はほとんどいなくなり、直通バスもやがて廃止された。 路線バスはあるのだが、もはや駅前商店街には昔の活気は見られない。 今では新しいスタイルのショッピングモールといわれるイクスピアリが出来て、TDLのお客はホテルを含めて舞浜地区内で食事から買い物まで済ませて、浦安市街は素通りして帰ってしまう。 もともとTDLでは和食レストランがなかったりアルコールが呑めなかったという事情から発生した一時的な仮需要だったと諦めるしかない。 浦安にも昔ながらの釣り舟や屋形船といった観光資源があるが、ディズニーの観光客とは余りにも客層が違いすぎる。 浦安市の商店連合会もディズニーシーが出来ても事情は変わらないだろうと諦めている。 オーランドのように夜のテーマパークともいうべきチャーチストリート・ステ-ションやインターナショナルドライブがないし、人工的に作ることも難しい。
増車を繰り返してわが世の春を謳歌したタクシーは、今度は一転してお客不足となった。 おかげで、地元客は深夜でもタクシー待ちで行列することはなくなり、何時の間にかあの非合法の乗合タクシーも姿を消した。 タクシーという乗り物は、足りない時より余った時の方が始末が悪いものだと思う。 不要になっても直ぐには台数は減らないので、運転手はかわいそうである。 流し営業のない浦安では、駅しか行くところがなく、えんえんと行列を作って道路を塞ぎ、ロータリ付近では2重駐車して交通を妨げをしている。
追記 ディズニーシーが開園して間もなくの9月11日、関東地方を今年2度目の台風が襲った。その夜10時のテレビニュースに突然、ニューヨークの世界貿易センタービルで起きたテロ事件の映像が飛び込んできた。 これまでにもハイジャック事件は数多くあったが、民間のジャンボ旅客機を乗客・乗員もろとも爆弾として使用するなどということを誰が予想し得たであろうか。 しかも、その光景を生の映像で見せられるとは、本当に声も出ない程のショックであった。 同様の攻撃を受けたワシントンのペンタゴンは軍施設だが、世界貿易センタービルは世界中のビジネスマンが利用する場所であり、多数の被害者は全部民間人である。 私も以前、観光客として展望台に上ったことがあるだけに、とても他人事とは思えない。 事件以降、どのテレビ局もコマーシャルの時間まで割いてテロ関連のニュースを流している。 今日は事件から丁度一ヶ月目で、報復の空爆が始まって4日が経った。 今後事態がどう展開するのかは未知数だが解決は長期化しそうである。 こんなときにディズニーランドの話など不謹慎だと叱られかも知れないが、一日も早くに平常に戻ることがテロに屈しない態度だと思う。 そこでお許しをいただいてコラムを続けることとする。
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●坂本 互(さかもと わたる)
元タクシーサイト代表取締役社長、現在タクシーサイト顧問 元タクシー問題懇談会会員 元イースタンモータス常務 株式会社システムオリジン顧問 東京におけるタクシー向けコンピュータシステムの草分け的存在
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