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団塊耕志録 - 清野 吉光(きよの よしみつ)

6稿 「タクシー乗務員は普通の人?」 2001.08.21

タクシー乗務員というと世間一般にどのようなイメージで移るのだろうか?自分自身26歳でタクシー乗務員になるまでと、なった後のタクシー乗務員への認識はやはり違う。
 どこかの裁判官の「雲助」発言は極端な例だが、マスコミなどでも悪い事件のニュースでは何故か「元タクシー運転手」などと報道される事が多い。そこにつきまとうニュアンスはあまり肯定的なものではない。
 またタクシー会社の経営者でさえ、乗務員の人を低く評価する人もいる。確かにタクシー乗務員には高齢者が多く、その分いろんな経歴といろんな経緯で乗務員になっているから、多種多彩で、クセの強い人もいるだろう(自分もまさにそうした人間の一人だった事になるのだが)。

 しかし、3年間の限られた乗務員生活ではあるが、自分の正直な実感は世間のイメージよりはるかに普通の人達の世界(?)であるという事である。もちろんタクシー乗務員になるまでの自分の世界が異常すぎた事も影響しているであろうが、大概の人は良いおとうさんで、気さくで、自分たちの生活のリズムにしたがって、日々の仕事を着実にこなしている人達である。
 自分の経験でも、前稿でもチョット触れたが、社内でソフトボールのチームを作ったり、同じ出番の気のあった人達で親睦会を作り、持ち回りで、夫々の家で飲み会をやったり、清水市内を流れる鮎つりで有名な興津川にバーベキューにいったりと先輩の乗務員の人達が、ずいぶん歳の違う自分たちにもわけへだてなく付き合ってくれた。

 だから、タクシー乗務員の社会的評価が低いのは、元乗務員としては寂しい限りである。
 しかし、一方で歩合制給与とメータ運賃という事から、ツイ乗客をないがしろにし、世間の不評を買ってしまうような行為をする運転手さんが一部とはいえ、存在するのは事実である。もちろんこうした乗務員さんに教育や指導は必要であろうが、本質的にはやはり、タクシーという仕事をもっと付加価値の高い仕事に「改革」していく事が必要だと思う。
 タクシーは折角、24時間稼動の、乗務員というマンパワーと移動体としての車と無線という移動体通信の機能をもちながら、その資源に比して、あまりにも生産性が低い。自分自身タクシー乗務員をしていて、待ち時間(都市部では流しの時間という事か)が非常に長くて、稼いでいる時間(メータを倒している時間)が少なすぎ、効率の悪さを実感したものだった。
 時間と地域による需要と供給のミスマッチが激しく、一方でタクシーに乗りたくても乗れない乗客が、存在し、一方で延々と続くタクシーの客待ちの行列。近い距離だと乗務員にイヤな顔をされるからと(或いは初乗り料金が高すぎるからと)足の痛いのをこらえて歩く人のよいおばあさんと、エンジンをかけたまま待機場所であくびをしながらひたすら待ちつづける乗務員のアンバランス。

 タクシーの乗務員さらにはタクシー業界がその社会的地位を上げるためには、やはり、「地域の総合移動産業」(「モバイル交通革命」寺前秀一)に脱皮し、消費者の多様なニーズに即したサービスを提供し、乗務員の生産性をあげ、結果、乗務員の士気と給与を高めねばならないと思う。付加価値を生み出すものにこそ、社会的評価が与えられる。
 今までのタクシー業界ではこうした挑戦はしたくても、許されなかったが、これからは違う。むしろ行政の方がそれを積極的に期待し、促進しようとしている(筈である)。
 こうした挑戦が首尾よく成就すれば、「タクシー乗務員は普通の人?」という表題の質問はまったく別のニュアンスをもって捕らえられるようになるだろう。つまりタクシー乗務員は高度なサービス精神、ノウハウをもち、付加価値の高い仕事をし、高給をとる【普通ではない人達】だと。

 こうした世界を作り上げる事は簡単ではないが、その課題を実現したタクシー会社がこれからの時代、本当に勝ち残れるのではないかと思う。

 元タクシー乗務員として、そうした世界に挑戦する会社にすこしでもお役に立てるようまた自分自身も頑張りたいと思う。


第5稿 「英語を勉強するにはタクシー乗務を!その2」 も読んでみる

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清野 吉光(きよの よしみつ)

1950年 長野県四賀村生まれ
1968年 上智大学外国学部ロシア語科入学
1971年 上智大学中退。印刷関係、皮革関係など様々な職業に従事
1976年 清水市の日の丸交通入社
1979年 清水市内の学習塾教師(英語担当)
1980年 静岡市内の(株)事務機器センター入社
1982年 (株)システムオリジンを仲間と創業。専務取締役
1992年 代表取締役社長就任
2000年 株式会社タクシーサイト・ドット・コム常務取締役就任
2003年 株式会社タクシーサイト代表取締役社長就任

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