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平成徒然草 - 坂本 互(さかもと わたる)

8稿 「今様牛若丸考」 2001.06.05

今年は花見が終わった頃から、テレビのニュース番組が急に面白くなった。スポーツ・ニュースはいつもメジャーリーグでの日本人選手の活躍から始まる。 野球とベースボールは違うスポーツだと誰かが云ったが、今のところは日本人選手は立派に通用している。
 筆頭はなんと言ってもシアトル・マリナーズのイチローである。その活躍の詳細をここで改めて紹介するまでもない程、イチローのプレーはレベルの高いアメリカのファンの心をも掴んだようである。
彼らはイチローの攻走守のすべてに、今までになかった野球の醍醐味を発見したようである。彼らはイチローが内野ゴロをヒットにしてしまう間一髪のスリルを味わうために球場にやって来る。 アメリカの全国紙に、マリナーズ・ファンはライトのことを『エリア51』と呼んでいるという記事が出ていた。 『エリア51』とは、アリゾナ州にある空軍の秘密基地のことで、そこには宇宙人と軍の共同施設がありUFOが隠されていると噂されている。とうとうイチローはエイリアンにされてしまった。 もしオールスターに選ばれたら、そして活躍できたら、と期待は膨らむばかりである。

 野村監督がアメリカ向きだと評したニューヨーク・メッツの新庄もなかなかがんばっている。一時不振だったが開き直った後の活躍は目覚しいものがある。 高給を捨てて自分の夢に挑戦した姿勢と持ち前の明るさがニューヨーク子の好感を呼び SINJO+ENJOY=SINJOY なる新語が出来たそうである。不振のメッツにあって5月の月間打率はチーム上位で、ほぼレギュラーの地位を確保したようである。

 投手ではマリナーズの佐々木がリリーフポイントでリーグのトップを切っており、大魔人の呼び名も定着した。イチローが活躍すればクローザーとしての佐々木の出番が増えるので、 二人の活躍は連動する。ボストン・レッドソックスの野茂も今年は快調である。シーズン初めにノーヒットノーランを達成し、先日は一安打無四球で完封試合をやっている。 日本選手が活躍した日は、結果が判っているのにあちこちのチャンネルをはしごしてスポーツニュースの取り上げ方を確認したくなる。 土曜や日曜には BS放送で試合を通しで観ている。最近は野球を知らなかった女房までが、アメリカではストライクとボールの順序が逆なのよと教えてくれる。 しかし、野球中継が増えた分、NBAの中継が減ったのは残念だ、NHKさんなんとかならないの。

 野球だけでなく、サッカーではローマの中田英寿の移籍金が 900億リラ(51億円)になったとか、競馬ではフランスで武豊騎手が優勝したとか海外で日本選手が活躍している。

 大相撲にもモンゴルから来た小結・朝青龍明徳がいる。体重は129キロしかないが、今場所は1横綱4横関を総なめし、殊勲賞に輝いた。今、モンゴルから24人が大相撲に来ているそうだが、 新しい決まり手を増やすなど日本の伝統競技に新風を吹き込む効果を挙げている。

 NBAのフィラデルフィア76ersのアレン・アイバーソンは 183センチのちびだが、1997年にはルーキーオブザイアーになった。今年はなんと史上最低身長&最軽量のMVPに選ばれた。 2メートルを超す大男の中を疾風のように駆け抜け、信じられない難しいシュートを決めるプレーは敵方の観客をも魅了する。

 日本人なら誰でも、五条の橋の欄干に牛若丸が乗って弁慶をあしらった話をこどもの時に聞かされている。
若い人はどうかなと、我が社の20才台の社員に聞いてみたら、「京都の橋の上の話でしょ」と ちゃんと知っていた。

 西洋にも同じような話が旧約聖書に載っている。イスラエルとペリシテ人の戦いで、少年時代のダビデ王が青銅の槍、兜鎧を着けた巨人ゴリアテを、杖と投石器だけで倒した話は有名だ。 洋の東西を問わず、いつの時代でも少年がむくつけき大男を倒すことに感動し喝采を送る大衆の心理に変りは無い様である。

 スポーツ選手と一緒にするのは失礼だとは思うが、今ニュースがこんなにも面白いのは、なんと言っても小泉首相の登場の故である。今まで政治に関心がなかった主婦や若い人達までも 国会答弁のニュースに夢中である。小泉首相は年齢ももうすぐ還暦だし背も小さくないが、自民党内の永田町的な権力という点では殆ど無力に近かったといえる。 それがあれよあれよという間に総理になってしまった。これも一種の牛若丸現象と見ることもできるが、そんな単純なものではなくもっと深い歴史的な意義がある。

 4月に自民党の総裁選挙が始まってから現在までの経過は、良く出来たシナリオによるドラマを観るようである。今度の総裁選挙は、マスコミはあたかも首相公選のように大きく扱ったが、 大方は結果が判っている出来レースと見ていた。地方予備選挙で小泉候補は党員でない一般大衆に向かって一生懸命「構造改革」を訴え続け、ドンキホーテと笑われながらもこの姿勢を貫いた。 これが地方の自民党員を動かし予備選での地滑り的な勝利を齎した。今になって顧みると、この頃から小泉さんには与党も野党もなく、 国民全部を動かさなければ日本を救えないという使命感のようなものがあったのではないか。

 4月末の小泉内閣の成立時支持率が史上最高を記録すると、やれファシズムだとかポピュリズムだという疑問も提されたが、大方は森内閣の反動から小泉首相への期待が先行した 「共同幻想」という見解が多く、いずれ下がる一方になると見ていた。 就任後1ヶ月が経過する中で、小泉内閣の目指す具体的施策と方向が明らかになるにつれ、支持率が更に上がるというかつてなかったことが起きている。 たった一人総理が変わっただけでこの変化は何だろうか。これは首相が卑下して言うような「アイドル小泉さん」ではなくて、国民は首相を「救世主小泉」と考えているということであろう。

 思えば、私達今の日本人は本当に面白い時代を生きているものである。一年もすれば結果はもっとはっきりするだろうが、小泉さんが細川護煕さんのように潰されてしまうのか、 織田信長やゴルパチョフのように古い体制を壊せるのかを自分の目で見れるのである。もしその世直しが成功すれば、後世の歴史に「平成の大改革」として残るに違いない。 忘れてならないことは、その時われわれ一般大衆は観客としてではなく、自らがそれを演じる役者となるということである。


第7稿 「人類を救うアーミッシュ」 も読んでみる

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坂本 互(さかもと わたる)

元タクシーサイト代表取締役社長、現在タクシーサイト顧問
元タクシー問題懇談会会員
元イースタンモータス常務
株式会社システムオリジン顧問
東京におけるタクシー向けコンピュータシステムの草分け的存在

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