タクシー会社をさがす・料金を調べる・観光する ようこそ ゲストさん ログイン | サイトマップ | サイト内検索 | お問い合わせ

コラム

ホームヘルプ
トップページ / コラム / 平成徒然草
平成徒然草 - 坂本 互(さかもと わたる)

7稿 「人類を救うアーミッシュ」 2001.05.01

アーミッシュの学校は1年生から8年生までが同じ教室で一緒に勉強する OneRoomeSchool で、歩いて通える範囲の生徒を集めるので少人数の生徒を一人の先生が教えている。 先生も8年間しか教育を受けていないアーミッッシュの女性である。まさに「24の瞳」のような学校で、いじめや登校拒否などない。 教科は基本的な知識、つまり英語の読み書きと算数、歴史と地理など普通の学校と同レベルである。 教科書はアーミッシュのために特別に作られたものか、20年程前に公立学校で使われていたものがずっと大事に使われている。
アーミッシュの子供は実によく家の手伝いをする。学校の授業が終わると真っ直ぐに家に帰るし、農繁期には学校が休みとなることもある。 アメリカでも1920年代までは主に農耕で生計を立てている地域が多く、学校側も農繁期に対する配慮をしていた。 その頃は、アーミッシュの子供達も公立学校に通って他の子供達と一緒に勉強していた。アメリカ社会が農耕社会から脱するにつれて、 アーミッシュの描いていた学校像とのギャップが大きくなっていった。生物や性教育の授業や農繁期への配慮のなさ、競争主義などがアーミッシュの考えと食い違ってきた。 アーミッシュの社会では「協力」「控えめ」「例にならう」というのが良いとされ、余計な知識は人間を傲慢にするものだとされる。 今では公立学校へ行かないことや正規の資格を持たない教師が教えることが最高裁の判決で正式に認められている。

  アーミッシュの社会には生命保険も健康保険も介護保険もないが、老人や障害者に対する差別もない。 老人ホームや障害者学校などの施設に頼る代わりに、家で若者が老人の世話をし、健康なものがそうでない者を助ける。経済的にも社会的にも、 理想的な社会福祉の原型がこにある。現代的な医療を受けず,バースコントロールも禁止されているので一家庭平均8人以上の子供を産み育てる。 アーミッシュの生活は日の出と共に始まり、子供も一緒に家族全員が協力してそれぞれの役割に応じた作業をこなす。食事は必ず家族揃って食べる、 特に夕食後は団欒の時となる。そこでは犯罪や離婚や家庭内暴力とは無縁で、親子の断絶もない。夜はランプだけなのであまり遅くまで起きていることはしないで早く寝る。  アーミッシュは小さな教会グループ毎に、お互いが同じ信仰をもって家族のように結びつき助け合って暮らしている。 日曜日は安息日で一切の仕事をしてはならない。アーミッシュの社会には教会の建物はなく、2週間に一回、 教会グループで各自の家を持ち回りで教会として使って礼拝を行う。朝に始まった礼拝の後には、全員でお昼ご飯パーティーを楽しむ。この日曜日は アーミッシュの人たちにとってただの礼拝ということでなく、他のアーミッシュのメンバーと交流する貴重な時間である。最初に紹介した Country Style のレストランは このパーティーを体験させるものである。

 アーミッシュの典型的な特徴は幼児洗礼をしないことにある。彼等は成人になる前に、 洗礼を受けて一生アーミッシュとして生きるか,イングリッシュとなって(アーミッシュにとって彼ら以外は皆イングリッシュである)コミニュティから出て行くかを自らの意思で決めなければならない。 若者の約8割が個人の自由を捨てる代わりに、暖かい雰囲気の安心できる居場所と確固たる民族的アイデンティティーを得る道を選択するそうである。 積極的に外部の人に伝道することはしないが、こうして彼らの社会は100年間で30倍にも発展したのである。

 さてそろそろ本稿の纏めとして、この末世の時代に桃源郷のようなアーミッシュの社会が何故残り得たのかについて、私なりの考えを述べてみたい。なんと言っても、 その最大の要因が彼らの宗教にあることは間違いない。私は最初、あの少人数の寺子屋教育でマインドコントロールをしているのではないかと推測していたが、 それは間違いであった。アーミッシュとしての自覚や価値観は日常生活の中で自然に培われるのである。 独自の言語はそれを補助する役割を果たしているが絶対的な要素とは云えない。生活の基礎を農業に置くことで自給自足が可能となり、 周囲の社会と出来るだけ没交渉の環境を維持できた。農産物を販売することで成り立つ大農場経営でないので、 税務署ははじめから税金をとることを諦めているらしい。しかし病気等の不意の出費に備えるためや、 分家する子供達のために新しい農地を獲得するためにも、やはり多少の貯蓄は必要となる。それを助けた陰の存在として、 オランダ人の役割は無視できない。それにしても異質な社会の存在を許容しているアメリカの移民国家ならではの懐の深さには驚くばかりである。

 はじめは風変わりな観光地としてアーミッシュ・カントリーを紹介するつもりだったが、そこには思いもかけず深い意味が隠されていた。
ローマクラブが『成長の限界』で、人類がこのまま無分別に経済成長を続けるならば、資源の枯渇や環境破壊で人類を破滅へと導くだろうと警鐘を鳴らしてからまだ30年も経っていない。 その間、事態は改善されることもなく、オゾン層の破壊、地球温暖化、砂漠化、酸性雨、発展途上国の人口増加、食料危機など、環境汚染や環境破壊の被害が現実のものとなってきている。 しかるに、世界のほとんどの人々は、まだ地球は無限の存在で、資源は無尽蔵にあるという楽観論を信じたがっているように思われる。 先日も温暖化ガスの4分の1を排出する米国が京都議定書からの離脱を宣言したが、人類は現実に崖縁に立たされなければ、世界的な合意などできないのかも知れない。 最近では、化石燃料の枯渇より水資源不足の方が先に危機化するだろうと言われているが、資源不足の不安が民族紛争を激化させる一因となっている。  また、物質文明が進んだ先進国では、人口の都市集中が進むにつれ家族の絆が薄くなったり、隣人同士の心の触れ合いが無くなることで、色々な社会問題が増えてきており、 いまや社会は精神的にも病んでいるように思える。
今世紀地球の最大の課題であるこれらの諸問題に対し、 「アーミッシュの生き方が人類を救う」というのはいささか誉め過ぎだが、その持続可能な文化や絶対的な平和主義が役立つ時がきっと来るだろう。

参考文献
どの宗教が役に立つか  ひろ さちや著 新潮選書

http://www.hannan-u.ac.jp/~tsutsui/usa/amish/amish.html


http://www.geocities.com/mt2111/amish/amishmenu.html (※このURLは、現在閉鎖中です。)


http://www.rainbow.co.jp/Long-Run/10/voices/hiro_10.html (※このURLは、現在閉鎖中です。)


http://www2u.biglobe.ne.jp/~kabocha/Amish.html (※このURLは、現在閉鎖中です。)


http://www.brl.ntt.co.jp/paclic14/info/Stat/HT.../omura.html (※このURLは、現在閉鎖中です。)


http://www.pa.airnet.ne.jp/iida/amish.html (※このURLは、現在閉鎖中です。)


第6稿 「アーミッシュの価値感に学ぶ」 も読んでみる

バックナンバー 平成徒然草

坂本 互(さかもと わたる)

元タクシーサイト代表取締役社長、現在タクシーサイト顧問
元タクシー問題懇談会会員
元イースタンモータス常務
株式会社システムオリジン顧問
東京におけるタクシー向けコンピュータシステムの草分け的存在

このコラムに関する皆様の評価をお聞かせください。

 面白かった  面白くなかった  どちらでもない

    

本コラムに関するご意見やご感想がございましたら、サポートセンター へご連絡ください。