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平成徒然草 - 坂本 互(さかもと わたる)

5稿 「アーミッシュの歴史」 2001.03.07

前稿ではペンシルベニア州ランカスターのアーミッシュの社会について、ほんの一部を紹介した。考えてみれば、世界で最も近代的で合理的な大国アメリカに住みながら、250年以上も生活様式や文化を変えない集団が存在しているということは凄いことである。ハリソン・フォード主演の映画、目撃者「刑事ジョンブック」を観てからずっと疑問に思っていたのは、いかなる環境や要件がそれを可能にしたのだろうかということであった。しかし、観光客としてのたった一日の訪問ではとても解明できるものではなかった。 そこで情報の宝庫たるインターネットの助けを借りることにする。
 17世紀の前半までは、北米東北部一帯はオランダの植民地だったが、第3次オランダ・イギリス戦争の結果、1674年にイギリス領となった。1681年に、チャールズ二世からクエーカー教徒のウィリアム・ペンが、領地としてペンシルベニアの地を賜った。ペンは当時ヨーロッパ各地で迫害を受けていたプロテスタント教徒達のために「信仰の自由の国」を建設し、Philadelphia(ギリシャ語で兄弟愛)と名付けた。

 アーミシュはプロテスタントのメノー派に属するスイス人 Jacob Amman が17世紀末に始めた一宗派で、洗礼は大人になってから自からの判断で受けるべきと主張し、幼児洗礼に反対することからアナパプチストと呼ばれた。 その思想は「文字通りの聖書の解釈」に基ずいており、「従順」「謙虚」「質素」を生き方の基本としている。 貴族の特権を認めず、教会、教義、儀式や聖物といったものにとらわれず、専任の牧師も必要としない。徹底した平和主義と無抵抗主義から軍役も拒否する。 これでは、カトリックのみならずプロテスタントからも異端とされ、社会全体から猛烈に迫害されたのも無理からぬところかもしれない。迫害に対して、その教義から自分たちの命でさえも物理的な抵抗はせず、ひたすら逃げることだけが危険回避の手段であった。 彼らはスイスとドイツ南部の山間地帯にコミュニティーを作り、自治に近い生活形態をとり、領主や教会といった外部との関係を出来る限り絶とうと試みた。

 執拗に迫害されるアーミッシュに救いの手を差し伸べたのがウイリアム・ペンである。新しい領地の開拓に、アーミッシュの優れた農業技術が必要だったからだともいわれている。 1720年に最初の一団が移住して来たのが始まりで、ここからアメリカ中西部22州に広がった。20世紀初めには5000人だったアーミッシュは、現在ではカナダも含めて14万5千人に達する。

   迫害の歴史がなければ、彼らの文化や社会は、これほどしっかりとした形で残っていなかったという説がある。迫害を経てアーミッシュ内部では、辛酸を共にしただけに強い団結意識を持つようになった。もし迫害がなければ、他の社会から自分たちを隔離する必要はなかったし、アメリカに移住する必要もなかった。このアメリカ入植はアーミッシュ文化とその独自の共同体を形成する上でもっとも重要な要素であったというものである。 しかし、迫害だけがアーミッシュの文化を継続させた原動力とするには無理があのではないか。安寧の地アメリカでは数が増えたのに、ヨーロッパに残ったアーミッシュは消滅している。

 アメリカのアーミッシュは、ヨーロッパに居た時のように、自分達だけの部落を作ることをせず、他のアメリカ人と隣り同士とか道の反対側とかに普通に住んでいる。 ランカスター地方は通称ダッチカントリーと呼ばれるほど、オランダ人の子孫が多い。 前稿でレイ・プライス氏が観光事業を経営しているのはオランダ人だという説明があったことを述べたが、近年アーミッシュとオランダ人との結婚が増えているとの重要なヒントを教えてくれたことをすっかり忘れていた。 以上これまでに調べたり聞いたりしたことを総合して考えると、アーミッシュの入植が先住者たるオランダ人とのトラブルなしで行われたこと、その後も隣人として相互依存の良き関係が続いて来たことが推察されるのである。

つづく


第4稿 「懐かしのアーミッシュカントリ」 も読んでみる

バックナンバー 平成徒然草

坂本 互(さかもと わたる)

元タクシーサイト代表取締役社長、現在タクシーサイト顧問
元タクシー問題懇談会会員
元イースタンモータス常務
株式会社システムオリジン顧問
東京におけるタクシー向けコンピュータシステムの草分け的存在

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