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英語観光タクシー奮戦記 - 土居 直樹

1稿 「英語観光タクシー奮戦記」 2008.04.04

終戦昭和20年生まれの当年63歳。15年前、福岡から京都にやってきた。
好きな英語を生かして外国人観光案内ができればいいな、とタクシー会社に入社。
得意だった英語を活かして会社や、京都のホテル、旅館からの外国人観光の仕事を増やす。
英語での観光案内だが、ガイド料は無料。
10年後、会社を辞め、個人タクシーとして独立。
以降、外国人向けホームページを立ち上げ、観光一本で営業を強化。現在、注文の100%が外国人か日本人接待の外国人。

2年前、営業車をクラウンセダンから7人乗りの日産エルグランドへチェンジ。外国人に対応する為、英語、日本文化歴史の学習を重ね、京都観光検定2級、そして先月やっと念願の通訳案内士(英語通訳ガイド)の国家資格を取ることが出来た。
これで、タクシー料金とガイド料金を同時に頂くことができる、京都に来てタクシーに乗り始めた頃抱いていた夢がやっと実現したことになる。
京都の観光地は無尽蔵。ほとんどが寺社仏閣、そして庭園だが、外国人を連れて歩いてガイドしながらそれらを巡る。タクシーを運転している時間よりお客と歩いている時間のほうが圧倒的に長い。
感嘆の声を聴きながら、伽藍を巡り、庭を歩く。ドライバーである以上に、ツアーガイドとしての仕事の冥利を味わっている。

4年前、この15年のタクシー人生で一番興奮した出来事がある。

京都駅ビルのあるホテルからの依頼で、3名のアメリカ人女性を3日間の予定で観光案内することになった。

1日目、二条城、金閣寺、竜安寺、嵯峨野・・・と、陽気なアメリカのご婦人たちはご機嫌上々。
その2日目の朝、新聞を読んでいると、ビル・クリントン前大統領が京都に入るとの記事が・・・。
観光の途中、「あなたの国の前大統領が京都に来るのを知っているか?」と何気なく聞くと、「実は私達はその準備の為に来ている。今夜、ホテルで大統領がスピーチをする予定だ。ひょっとすると、明日はあなたにちょっと違う動き方をしてもらうかもしれない。」 
 
3日目の朝、ホテルに迎えに行くと前日スピーチを済ませたクリントン氏がチェックアウト。
ホテルスタッフ達と挨拶を終えて、大統領はロビーの中央で昨日案内した女性たちと話を始める。
ロビーの傍らで待機していると、急に一人が振り向いて
”Doi, come along!”
「ドイさん、こっちに来て!」の声。  
一瞬驚いたが、あ、そうか、とピンと来て傍によると、彼女は「こちらはミスタードイ。今からあなたに京都の案内をしてくれます。」と僕を大統領に紹介する。
すると大統領は右手を差し出して
”Hello, Doi. Nice to meet you.” と来た。
とっさ、私も手を出して、
“Nice to meet you too, Mr. President.”
大統領は見上げるように背が高い。写真で見るより髪が白かったが、その微笑んだ表情は写真で親しんでいた優しさに溢れている。
ホテルのロビーはそれを見守るホテルの客、スタッフ、アメリカ人たちで一杯だ。
なんという、事態だ。ビル・クリントンを僕が案内する・・・!!
こうして、タクシードライバーが、直々アメリカの大統領を案内するという一大ハプニングが起こってしまった。

・・・・次回へつづく

  

バックナンバー 英語観光タクシー奮戦記

土居 直樹

1992年よりタクシードライバーとなる。英語を独学で勉強し、外国人の方を主に京都で観光タクシーの営業を行う。
2006年より従来の5人乗りのセダンから7人乗りの日産エルグランドに車を変更し、京都について勉強の日々を過す。
2008年2月、英語通訳ガイド国家資格を取得。英語ツアーガイドタクシーとして新たなスタート。

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土居 直樹

外国人が多く訪れる京都で観光タクシーを営業する、タクシー乗務員の奮闘紀