何故、折角のシステムが稼動していないのか? それは一言で言えば中国タクシー市場の現実とシステムのギャップにある。そもそも広州交通委員会がこのシステムを導入したきっかけは広州市全体で通用する後払いカードシステムをタクシーでも使えるようにしようという事らしい。その場で利用者はカードを使ってタクシー料金を支払い、乗務員の口座には直接料金が振り込まれるという仕組みである。そのために携帯電話のパケット通信網を使いリアルタイムの伝送処理が行われる。 折角そういう環境を作るので、GPSを積み、位置情報を基地局に上げて、最先端の配車システムを構築しようという事になった。 まさに広州市内の一万八千車両にGPS車載端末を搭載し、配車指示をコールセンターからデータ伝送する壮大なシステムになった。 しかし、運用上の問題として、電話で注文を受ける時にCTIシステムが無い為に、オペレータがその都度顧客名と場所を聞きだし、キーボードで入力し、車載端末に伝送している。従って、折角車の場所がわかっても、迅速な配車指示ができないでいる。電話を掛けてくる相手の番号を自動的に把握する所謂ナンバーディスプレイの機能はすでに中国でも実現されているのだが、顧客の電話番号、住所、位置が紐付けされたデータベースがなく、また電子道路地図はあっても、電子的住宅地図がないので、電話受け→最適配車のスムースな運用ができていない。 そして何よりも肝心な事は、タクシー営業が、流し主体で、電話によるタクシー配車依頼というニーズが殆どないという現実である。したがって、実際のところ、必要性に駆られてのシステムの構築ではなかった事が、システムの甘さにつながったのではないかと思う。どうせつくるなら北京や上海に負けない世界最先端のものをという強い競争意識、意欲の方がシステム構築の推進力になったと思われる。まさに現代の中国のダイナミズムとアンバランスを見る思いだ。 一方で日報も書かず、管理も無い、究極の歩合制の車買取方式、一方で最先端のGPS方式。このアンバランスをどのように受けとめたら良いか悩むところだ。が、急速に変化する中国社会同様、中国のタクシー業界も刻々と変化し、様々な問題に直面するようになるだろう。 そして中国がタクシー業界においても成熟した先進国の仲間入りをする上で、日本のタクシー業界が経験し、作り上げて来た、様々な仕組み、サービス、システムが、案外役に立つのではないかとひそかに期待をしている。(第3稿に続く)
このコラムはタクシー専門情報紙「タクシージャパン」2004年6月01日号に掲載された「清野吉光特別寄稿 中国TAXIリポート」から、特別に転載の許可を頂いたものです。 タクシー専門情報紙「タクシージャパン」ホームページはこちら
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●清野 吉光(きよの よしみつ)
1950年 長野県四賀村生まれ 1968年 上智大学外国学部ロシア語科入学 1971年 上智大学中退。印刷関係、皮革関係など様々な職業に従事 1976年 清水市の日の丸交通入社 1979年 清水市内の学習塾教師(英語担当) 1980年 静岡市内の(株)事務機器センター入社 1982年 (株)システムオリジンを仲間と創業。専務取締役 1992年 代表取締役社長就任 2000年 株式会社タクシーサイト・ドット・コム常務取締役就任 2003年 株式会社タクシーサイト代表取締役社長就任
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