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2003年、大阪地区のタクシー料金の値下げ戦争が激化の一途である。 各社、それぞれの考えの料金申請を近畿運輸局に申請し、その運賃・料金が簡単に認可(許可)されている。大阪市内区域のタクシー運賃はどのくらいあるのだろう?現役のタクシー運転手の自分でも解からない。恐らく30種類弱はあるはずである。先日も走行中に1キロ250円の俗に言う1キロタクシーの個人タクシーを見た。一度、値下げした運賃は値上げできない。値上げすれば世間からの総轄が待っている。日本マクドナルドの値下げ販売の失敗戦略がよい例である。大阪のタクシー関係者は今は値下げで僅かに客がくる、しかし数年先、数十年先のタクシー業界のことなんか一切考えていないのである。まぁ、死んでこの世から居なくなるのだから、将来未来のタクシー業界のことなんか考える必要もないのだろうが…。 中国の有名な故事成語に『一去不復返』…というのがある。勘の良い人ならお分かりだろう。この言葉は「ひとたび去ると再びは帰ってこない。永遠に過ぎ去る事のみ!」…という意味に例える言葉として広く使われている。そうです!お分かりですね。 『風粛々兮易水寒、壮士一去兮不復還!』(北風は粛々(しょうしょう)として易水寒し、壮士(そうし)一度去って復(ま)た二度と還(か)える事を違わず)…の一文なのである。タクシー運賃を一度値下げしたり、大幅割引をすると二度と元の運賃に戻す事は容易ではない。この故事が成語になったのが紀元前227年。はたして秦の時代に遠く大陸から2230年後の日本国のタクシー業界を予想していたのであろうか? 図書館で明治から大正、昭和初期の新聞の縮刷版や、そのマイクロフィルムを閲覧すると思わぬ記事に出くわす。あまりにも現在のタクシー業界が70年前前後の時代のタクシー業界にそっくりなので仰け反る。それでは数件だけ紹介しよう。これはタクシー業界が70年前から進歩がないという事なんか?歴史は繰り返されると言う事なんか?ワイは個人的に前者だと思うのだが…。 尚、掲載にあたり70年前の記事でもあり著作権が切れていると思われますが、万が一に著作権に抵触するようでしたら、関係各位におかれましては削除要請の連絡を下さい。即刻削除します。 尚、転載に際して極力旧カナ使いをしております。又、文中の●●…は、現在でも新聞掲載者の判断が出きるとして当方の判断にて勝手に伏字にいたしました。
【大阪時事新報 1934.2.1(昭和9年)】 『円タクの非常時/運転手百余名、悪資本に対峙“架空の売買契約で車を奪取”と今早暁の大集結!』 自動車事業法の制定に伴うタクシーの直営制度は愈々きょう一日から実施されるので、大阪市内三千台に達するタクシー業者は過般来これまでの相互組織を営業者の直営に改めるべく車体を所有する運転手との間に車体買上げの売買契約を結び、さあ今日から直営―料金は改正値段の二キロ三十銭を一歩も譲らぬと物凄い意気込みを見せていたが、業者の大半が運転手から車体を買上げる際現金を支出せずガレージ業者が結束を固め表面的に現れる法的手続きを胡麻化すため、運転手に架空の売買契約書を示し強制的に署名捺印させたことが問題となり俄然三十一日深更に至り、タクシー運転手の一角からこれは法網を潜り無償で運転手から車を奪う業者の陰謀だという不満が爆発、寄り寄り対策運動を開始したが、そのうち最も尖鋭化した国粋大衆党所属国粋交通連盟加入の運転手百数十名はガレージ業者の不法を徹底的に糺弾するため、今早暁午前二時を期し今里新地演舞場東方の広場に車もろ共続々集結、気勢を挙げているが国粋交通連盟では一日朝九時大阪府庁に代表者をさし向け、県知事並に粟屋警察部長に対し、左の如き嘆願書を提出ガレージ業者の不法を暴露し新に大規模のガレージ営業権を認めさせ大同団結的に業者と抗争する計画で万一府が承諾せぬ場合は業者の死活問題として自動車のヘタリ込み戦術その他により、目的貫徹を誓い全市の業者に波及する虞れがあるので、府警察部では極度に狼狽している <嘆願書> 従来のガレージ業者の多くは自動車を所有する運転手との相互組織に有之候処今回法規の御改正に伴い直営制度となるに就いてはこれ等の車両をガレージ業者の所有となすべく買収するに際し買収すると云うは只単に法規の表面を飾るに過ぎずして裏面は車の所有者たる運転手に虚偽の売渡証を作成せしめ代償を支払わざるもの大半にして偶々代金支払いの形式を執るも何等の価値なき空手形の類を発行し若し此強要に応ぜざるときは廃車又は放逐等の威脅手段を加えつつ有之此の儘に看過せんか車の所有者たる運転手は虚偽と知りつつ法網を潜ぐる力車を無償にてガレージに奪わるるか、職を失い家族と共に餓死するか、三途其の一を選ぶの外無之其方向に迷い居候次第に就き右事情篤と御聴取の上可然方法御内諭譲り度く尤も文意の及ばざる点は口頭を以て補足陳述可仕く此段奉嘆願候也。 昭和九年二月一日 大阪市東区北浜一丁目二八.国粋交通連盟運転手一同 大阪府知事 県忍殿
【大阪時事新報 1934.2.4(昭和9年)】 『運転手の不満遂に法廷で爆発/円タク直営制へ/新府令を楯に車を奪う営業主を訴える』 直営制度の実施を奇貨に暴虐に近い搾取を行ったガレージ業者に対する憤懣が各所に爆発している折柄、営業権を楯にガレージ業者が如何に横暴を極めているかという一例が遂に大阪区裁判所調停裁判にもち出され俄然各方面にセンセイションを起している。 大阪市港区●中町●丁目七七.自動車運転手山田秋男=特に仮名=は、大阪借家人組合長●●喬一氏を代理人とし、三日午前十時大阪区裁判所に同港区●●町●丁目●●、●タクシー主●●●氏を相手取り車体擁護の調停訴訟を提起した。 原告山田運転手の主張によると同氏は昭和八年九月前記●タクシーを通じ三三型シボレー一台を三千八円二三円でで購入、常時内金として一千円を入れ、爾後毎月二百余円の月賦で車体を消却する契約を結び●タクシーと相互組織で営業を続け、妻子四人を扶養しつつ将来車が自分の所有になることを唯一の楽みに孜々と励み、今日まで残金二千八百二三円のうち六百五十四円を支払ったところ、新府令により相互組織が直営組織に変更された結果、●タクシーが新府令を楯に車体買戻しの交渉を始め、しかも新営業が許可されぬため二足三文に値を叩かれ、同時に若し買戻しに応じられぬ場合は残金二千百六十九円を一時に支払えという難題をもちかれられたため一家の生命線とたのむ車体を擁護するため法の情にすがり、残高を十円月賦の償還にして貰いたいと本訴に及んだもの。直営制度に伴うこうした運転手の悩みは至るところにありこの調停裁判の結果が各方面から期待されている。
【大阪毎日新聞/1938.4.13(昭和13年)】 『タクシーのお客はあすから『乗り場』で指定地以外は乗れません/愈々実施される“流し統制”』 あす十五日から大阪市内一円にわたって円タクの流しの統制が実施されます。「中央」「松島」「築港」「上六」「今里」「新世界」「飛田」の七つの甲種駐車場区域内では指定された駐車場(三七六ケ所)および乗車場(一四四ケ所)以外では絶対に円タクに乗車することが禁じられていますから、乗客はまず写真のような「タクシーのりば」の標識を探してそこで円タクを拾わなければなりません。 またその他の指定駐車場区域でも成るだけ駐車場から乗車するようにして貰いたい、そして駐車場で行先が近距離だからといって乗車を拒絶するような運転手があった場合には早速最寄りの巡査派出所へ申告して下さい、そんな不届きな運転手はドシドシ厳重に取締ることになっていますから-と府交通課では一般市民の注意を求めています。
【時事新報1935.6.10(昭和10年)】 『円タク十日休日案・車輛主運転者の団体から帝都交通統制案対策陳情』 松岡駒吉氏を会長に推戴する一車輛待営業者(運転者)の団体として業界に独特の存在価値を発揮している日本労働総同盟自動車同志会では、目下内務省に於て続開している帝都交通研究会の求めにより運転者代表を委員会に送りタクシー統制問題に付いて意見を吐露しているが、過日の組合大会に於て決議した統制案即ち一ケ月中二十日間を営業し十日間を休業するという法案を最善のものと認め、今回松岡会長の名で後藤内相の手許に陳情を兼ねて営業用自動車十日間休日案説明書を提出した。その全文は左の通りであるがこの陳情を兼ねた説明書は内田鉄相、林陸相、小栗警視総監の手許にも送付された。 「有事の備えて伸縮性の必要 廃車案を排撃 陳情書の全文」 減車か?休車か?我々は先ず国情に立脚して慎重審議業者更正の為に活路を開かねばならぬ、帝都に於けるタクシー業界は昭和四、五、六の頃は最も順調にして、且つ堅実なる事業として世人注目の的となりしが、逐年車輛の増加に伴って自由競争激化し交通事故頻発の為に昭和七年十一月に営業自動車の車輛数が制限されたのである、然るに他の交通機関に何等の制限もなかりし為めに徒らに交通機関のみが増加されて今や帝都は交通地獄を現出し社会的にも亦業者にとりても重大なる危険に逢着しつつあるのである、今回内務省が中心となりて帝都に交通研究会が設置せられ同研究会に於ては各種交通機関統制問題と同時にタクシーの減車問題が相当有力化しつつあるやに聞及ぶと同時に業者間に於ても漸くタクシー車輛減車の必然性を認識するに至ったのである、然らば如何なる方法を以て減車すべきやが極めて重要なる問題であるといわねばならぬ一説に車輛四千台減車案あることを聞及ぶものなるが、本案はいずれの車輛を適法に減車せんとするか、何人をその犠牲に供せんとするや、使用廃止を為したる車輛の処分方法如何、其他等々の難問題族出の虞あり、翻って我国の興廃の危機とまで伝えられし、彼の戦慄すべき大震火災の際等に於て如何にタクシーが重要なる役割を果したるかを考うる時思い半に過ぐるものあり、殊に非常時日本の国防上欠くべからざる自動車である以上一朝事ある時の応急上伸縮自在の余力を保つ事こそ必要なりと言わねばならぬ、如何に交通機関の統制の為めなるにせよ、如何に業者の営業が不振なるにもせよ廃車(減車)案は断乎として排□すべきである。(中略………) 現在帝都に於けるタクシーは一日の走行哩数中約半数以上は空車にて走行しつつある実情なるが本案の要旨は運転車輛を減少し此の空車を防止する事に依りて事実上減車の実を掲げ尚交通事故の惨禍を減少せしめ併せて業者の増収を計らんとするものである。即ちタクシーは一ケ月営業日数を二十日とし十日間の強制休業を為さしめ全市のタクシー車輛運転台数を三分の一減少せしめんとするものである、勿論本案は他の交通機関一切に対し合理的且つ公平なる統制を為さるべき前提のもとに於ける立案なることを附言する。
【大阪朝日新聞 1935.6.29(昭和10年)】 『大将五十銭!/大局から見て最も妥当な賃金愈よ明後日から実施される新タクシー料金制』 スタート八分間五十銭、爾後三分またはその端数を増す毎に十銭という県案の神戸市内新タクシー料金はいよいよ明後七月一日から実施さるることとなった。 「値切り倒すと大概のところまで五十銭で行っていたのに八分間五十銭とはチト高過ぎはしないか?」という疑問を持つ人もあるが県消防、交通課と市内におけるタクシー、ハイヤーの営業者をもって組織している神戸自動車営業組合とが過去半ケ年を要し練りに練った賃金なので大局から見ても最も妥当なものとされている。まず従来のタクシーなれば、 イ. 賃金を交渉せずに乗った場合、高値を吹っかけられても乗客は文句をいえず何時も不安である。 ロ.運転手は次の客を拾うべくスピードをかけるため交通惨禍が頻出し市民の交通安全率は極度に阻害される何ら標準がないのでお上りさんや婦女子など安心してタクシーに乗れない。 (その他)口角泡を飛ばしての賃金交渉等幾多の弊害があり一方タクシー業者から見ると経営が何時も無定見に陥り収支バランスの目安がつかず運転手は客を拾うため無暗に自動車を流す結果、車体、ガソリンおよび時間を浪費し国家産業上多分の損失を被っていた訳合いにもなるが新料金の制定によって今後乗客は何ら交渉を試みなくても安心してタクシーに乗ることが出来るし統制によるスピード緩和で交通事故の惨禍を防止し運転手も無理をしなくなる等々一石二鳥の便法が与えられ業者側も新料金制には大賛成だという、新料金制に対し種々な疑問も湧くが、 国道石屋川、国道大石川、商大登り口、摩耶ケーブル、阪急上筒井、灘駅、元熊内橋、国道春日野、阪神滝道、三宮駅、大丸前、税関京橋、元町駅、中桟橋移住教養所、県庁裏、神戸駅、平野終点、天王谷祇園下、熊野神社、神有湊川、三角公園、兵庫駅、兵庫突堤、清盛塚、笠松七丁目、高松橋、長田交叉点、名倉町、丸山遊園地、西代、禅昌寺、大橋五丁目、鷹取駅、旧国道天上川、市電妙法寺川、離宮正門、須磨終点、須磨遊園地、境浜市郡境の枢要箇所四十地点に標準料金表を掲げて各区間の標準賃金を示し、自動車組合でも極力新料金を示し、自動車組合でも極力新料金の宣伝普及に努めているから時日を経るに従って市民に徹底されるものと思われる。一定の区間において標準料金表の所要時間以上超過した場合はどうなるか?仮に湊川三角公園から阪急上筒井までタクシーを拾ったところ所要時間十分を要したとすると単に時間的から見るとこの場合最初の八分間五十銭、残り二分は十銭、都合六十銭を支払わなければならぬ勘定だが、標準料金表は三角公園―上筒井間五十銭となっているから例え時間を超過しても標準料金以上の金を支払わなくともよい、交通遮断、交通事故、税関旅具検査、踏切通過、道路工事、車両の故障、その他不可抗力によって停車したときにはメーターはストップして勘定には入らない、標準区間が明らかでない場合、スピードを落とせば所要時間が多くなり賃金も上るではないかという心配もあるが、運転手にとっては八分間以内の客を一人でも多く拾えばそれだけ実績が上るのでスピードを落すのは却って損失を招く結果となる 市内の特別区は商大登り口以北移住教養所以北、丸山遊園地三叉路以西、平野祇園下以北、禅昌寺正門以北、武庫離宮正門以北でこれらの箇所からは特別料金を支払わねばならず市内間では境浜市郡境から商大登り口までの一円五十銭が最高である、石屋川郡市境界以東および境浜郡市境界以西の市外料金もカッチリと定められ湊川新開地を起点とするなれば東は御影、住吉まで一円三十銭、芦屋まで一円八十銭、西宮まで二円三十銭、梅田まで三円四十銭―西は垂水まで二円四十銭、明石駅前まで一円九十銭、姫路駅前まで五円九十銭、北東は有馬まで四円と定められハイヤー料金は一時間四円以内である、今後は雨が降ってもつけ込んでボラれることなく市民を安心してタクシーに乗らすというのが新料金制定の眼目で微細な点は常識に待つより仕方なしと県消防交通課では見ている なお昼間における片手組の助手は七月下旬ごろまでに順次廃止される模様だから「大将五十銭」の懐しの(?)声も自然解消となるだろう。実施日まで七十台新施設の困難車 営業許可されぬか神戸市内タクシーの新料金制は七月一日から実施と決定、タクシーは新料金制によるタイム・メーターの取付、従来のメーターの改造などに当っているがなお約七十台ほどは実施日までは間に合わぬ実情にある、しかし県消防交通課ではこれがために実施期を延長することは断じてせぬとの方針を堅持しており二十八日森崎神戸自動車組合長から陳情を受けた際にもこの旨明言し、さらに「実施期日までに準備不能の自動車には営業を許さぬ」と厳命した、森崎組合長はタクシー業者のために左の代案を提出した (一)準備不能のタクシーは準備の出来るまでハイヤー営業を許すこと (二)メーター取付の出来るまではストップ・ウオッチを使用し時間制料金率の主旨に従って営業することこれに対し県当局は一応の考慮を約した
【大阪毎日新聞 1935.7.9(昭和10年)】 『抜け道がある!これだけは御注意のこと改正タクシーの料金』 練りに練った所要時間制の改正タクシー料金制にも思わぬ抜け口があった。ここ数日来神戸自動車営業組合は幹部を動員して県消交課の応援を求め、流しを拾っては試乗、運転手や助手に新料金制を徹底させる一面不正手段の発見に努めてきたがその結果乗客がつぎのようなことを注意すればボラれる心配のないことがわかった 一、タクシーに乗ると同時にまずメーターの中間横一文字に赤い線が出ているかどうかを確かめることもしそこに五〇銭と出ていたならばメーターをかけなおさせる必要がある、それはメーターを二分なり三分なり動かして止めている場合もあるからだ、即ち八分五十銭のところをメーターを二分なり三分なり動かしてあったため五分か六分でつぎの六〇銭が出るので五〇銭で行けるところを六〇銭、六〇銭でいけるところを七〇銭要求されみすみす乗客が十銭損する結果になります。 二、空車の場合は必ずメーター機の上部にある赤い「ようのものがスタートと同時に客席から向って右側に落ちて八分まで五〇銭自後約三分またはその端数を増すごとに六〇銭七〇銭と十銭刻みに市内普通区の料金を表わすが反対に左側にある時は、二倍に動き四分過ぎで六〇銭、五分三十秒で七〇銭、七分で八〇銭と表れます、赤い「型が右に落ちていることを常に注意せねばなりません。 三、ゴーストップや細い道で荷馬車の列に会ったり鉄道の遮断機にひっかかった場合、その空費時間はタクシーの負担になっているので赤い「型を下に廻してメーターを止め、スタートと同時に右側に戻して正確な時間を測ることです。 四、タクシーには必ず“タクシー標準料金表”を備えることになっているのでこの料金表をしらべて予め標準料金―最高料金を知ることはボラれるおそれを未然に防ぐことになります。 五、各自の時計で所要時間を測りメーターの動きがあまり早かった場合はその自動車番号を湊東区中町通二ノ三六神戸自動車営業組合―電話元町五六八番―か県消防交通課に申告すればメーターを検査し、不良方法を講じたものは厳罰に処することになっています
【国民新聞 1935.8.27(昭和10年)】 『貧乏な運転手に被害者は泣寝入り/是は甚だ不合理だ交通規則改正/著眼の要点』 「ニュースから拾う営業主には痛い庁令“交通事故の賠償は当然責任分担”」 警視庁が交通禍の被害者、加害者両方面から考えて今度、自動車交通事業施行細則を改正、交通事故による賠償は営業主の負担になる事にしましたが、警視庁側の法規の説明を交通課長吉江勝保氏に、事業主側の言い分を有楽町某タクシーのご主人に伺いました。吉江交通課長は曰く 分担は当然 儲けだけを懐ろに蔵いこんで損失に知らぬ顔は変。今年上半期の交通事故中七割三分は自動車事故である、其の中示談関係八百七十余件を調べて見たが被害者は庶民階級の中でも主人が倒れたら一家の生計に直ちに差支え、従って治療代も出せない者が多い、損害賠償の訴訟を起すにしても、そういう人々は時間が掛っては困り、金もなく、手段も解らぬ、それで自然示談という事になるが今までは運転手が直接弁償していたので、被害者の方でも相手が貧乏な運転手ではあまり強い事も言えず、また三百代言的にやられては庶民階級の人は権利の主張をする者が少いので、つい言い負かされて僅かの金で泣寝入りするようになる。そこで第一に交通事故は都会の繁栄と共に増す一方であるから国家で根本的救済を計って交通災害保険の如き法律を作る事も必要であるが第二の手近な手段として警視庁で今迄の方針を変更し一般報告の様式の改正、示談形式の改良を試みたのである。それで事業主は今までは表面に出ず、精々その弁償金の立替位で収まっていたので弁償金は事業主が支払うべきものとする。営業の利益は事業主が収めるが、営業中の損失は被傭者が出すという不合理を除く、しかし、運転手に過失のない筈はないのであるから、その点は刑事上の責任になって処罰される。こうなるといやしくも事業主と名のつくものが金がないといって弁償金を出さない訳には行かなくなる、三百代言的の行為で一時逃れに其場は誤魔化しても示談の結果は細目に亙って記載され報告されるから、そういう行為のある者には注意を与え或は甚だしきは営業停止の様な処分もとれる事になる、運転手側の処分に就いては警視庁一般の方針として厳罰主義よりも本人の心からの改悛を望んで、その点が徹底すればよいのであるから罰金を課して貧乏な運転手を困らすよりも、充分に交通道徳の徹底に努めているのである 今回のようになれば朝車を出す時でも今までは唯稼げ稼げと追い出していたのが「事故を起すなよ」と一言でも云う様になれば随分結果は違って来ると思う、しかし事業主、運転手ばかりでなく、歩行者の方でも注意が肝要であって、自動車側ばかり攻める訳には行かない点も一般人士は特に反省して戴きたい。 営業主曰く、なるほどご尤もなお話です。 警視庁の今度の改正は当然だと思っています、円タクといってもハイヤー、損料貸、歩合、自分の車と色々種類があって一律には行きますまいが、一般的に云えば今の様な円タク洪水で不景気な時代には料金も安くなるし、運転手が弁償金を出そうにも出せやしません事業主が出すのは当り前ですよ損料貸にしても車によって違いますが大体十五円、それだけ出すにはどうしても二十円は稼がねばならぬ、そうすれば一日二百哩は走らねばならぬ、私なども自分で長らくやっていますがとても一日二百哩も乗り切れるものではなく、事故が□るのも無理はありません。私の方はハイヤーですから運転手にも余裕があって事故など滅多に起きませんが、弁償金は自分で出していました、事業主が出すのは当然ですよ。
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●ウエちゃん
タクシー運転手と文筆の二足の草鞋を履く大阪のタクシー運転手 著書・・・ 『笑う運転手/ウエちゃんのナニワタクシー日記』 『国道の西、夜明けのミナミ/ウエちゃんのナニワタクシー日記』 (両著とも…本の雑誌社より刊行)
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