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それは突然の、未明の大事件の解決だった。 犯人は新聞最終版〆切前後の自供で逮捕。 新聞各社は最終版にはなんとか間に合わせようと大慌て! 早朝から深夜まで各マスメディアでは『タクシー運転手!』の連呼である。 通常のテレビニュースの話題や、タクシー運転手が絡らみのヤラセ・ドキュメント等ではタクシー運転手の事を「タクシードライバー」…と言う。 しかし事件に絡んで容疑者になると何故か何処の局も「タクシー運転手!」…と言う呼び方に成る。不思議だ! 今回の青森の事件は衝撃的だった。 通常の街のニュースであれば、あれだけ『タクシー運転手!』を連呼するのだから宣伝料に換算すると、間違いなく…ン億円であろう。 本当ならタクシー関連業界にとってはタダで宣伝してくれるのだから、笑いが止まらない話である。しかし事件が事件なので複雑な思いだ! 本来ならこれだけ『タクシー運転手!』を宣伝してくれるのは、優勝や入賞なんかが絶対に出来ないマラソンの全国放送で、 最初の15分をテレビ画面中央でトップで死ぬ思いで走り、全国に会社名や企業イメージを喧伝するような話なのだが…。 当コラム前稿の第23稿で『腐ったリンゴ論』の話を書いたばかりである。まさか日本一のリンゴの産地から腐り切ったリンゴ1個が登場するとは情けないの一言である。 昨年の池田の悲惨な事件に続いて今度は青森だ。どちらにも共通するのがタクシー運転手。 たった一つの腐ったリンゴのおかげでこれで又、庶民のタクシー運転手に対する偏見が始まる。 2002年3月3日(日曜日/快晴) いつものように昼にゴソゴソと起きて午後からボチボチと仕事。 暇な日曜日だ。大阪の日曜日はタクシーの出庫台数が少ない。 大阪にあるタクシー会社の殆どは、日曜・祝祭日の公休制を実施しているので街を走っている法人タクシーの8割前後が公休出勤者である。 大阪の公休出勤者は陽が暮れると、入庫するタクシーが多いのが特徴である。 こんな日は客待ちの台数が少ない鉄道の駅付けが案外動く。 ウエちゃんの場合は日曜の夜はJR環状線が終わるまで仕事をする事にしている。 だが、本日は何となく労働意欲が出ない。なんかの虫の知らせなのだろうか?午後11時には入庫。 自宅に日付が変わる少し前に到着。家に帰ると直ぐにパソコンを起動して、全ての原稿に使っているワードのファイルを開く。
ほどなく日付が変わり3月4日(月曜日) 当コラムの更新原稿の最終チェック。漢字の間違いや『て・に・を・は』の違和感を修正する。 突然、eメールが続けて数通届く。発信元は全て新聞社である。そのうち2通は同じ新聞社の東京本社と大阪本社からである。 何事かと思いeメールを開こうとすると深夜にも関わらず電話が鳴り響く。びっくりして電話に飛び付いて出ると、 相手は某紙の記者さんからである。しかし、その記者さんとは逢った事もないし、面識なんか全く無い。 某紙記者さんが唐突に 「タクシー運転手の借金と、闇金絡みの保証人ついて教えて欲しいねんけどぉ?」 と質問を受ける。 「いったい、初見で唐突になんやねん!」 と思い詳しく尋ねる聞と、 「今、青森で取調べ中の強盗放火殺人の重要参考人に逮捕状の請求が出た。容疑者は現役のタクシー運転手だ。」 と某紙記者さんが言う。 「また、タクシー運転手の事件かいなぁ!」 と記者さんに吐き捨てる。 「サラ金強盗でタクシー運転手だから借金絡みに間違いはないねん。14版(最終版)の〆切時間が迫っているので予定原稿を仕上げたい!」 と言うのである。 そんなん言われても大阪と青森では、同じタクシー運転手でも借金の質が違うはずである。 「ワイ、あんたと面識なんかあらへんのに、なんで電話してくるん?」 と訪ねると、 「新聞社の社内LANでタクシー関係コメントを検索したら、ウエちゃんが出て来たんですわぁ! メールアドレスも出てるさかいにメール打とうと思ったんやけど、めっちゃ急ぐんで電話にしましてん。すんまへん!」 と某紙記者は平身低頭である。 電話取材に適当に相槌を打ちパソコンの前に帰るとスポーツ紙、地方紙からもeメールが届いている。 鬱陶しいので無視していたら、深夜の自宅へ電話のスタッドミサイル攻撃が始まった。 ウエちゃんは携帯電話なんか持ってへん!こんな時に携帯電話があったら家族に迷惑が掛からへんのにと、つくづく実感する。 そんな事を言いながらでも電話取材のコメントは、めっちゃ美味しい仕事ではある。嫌ではない! ほんの数分だけ記者さんの質問に、 「はぁ~!」「へぇ~!」「そうでんなぁ!」「そぉ思いますわぁ!」「その通ぉり!」 と答えるだけで数千円がギャラとして銀行口座へ転がり込んで来るのである。 昨秋、某週刊誌のタクシー関係の質問に5分ほど答えて10行ほどの記事になっただけなのに、びっくりするようなギャラが銀行へ振り込まれた事がある。 今年の確定申告で源泉還付に出向いた某税務署のオッサンも、 「これやから、しょ~もない評論家でも辞められまへんねんなぁ?こんなん勤労所得とちゃいまっせぇ!不労所得でっせぇ!羨ましいでんなぁ!おごってぇ?」 と感心していた。 色々な記者さんと電話で話をしていたら、これが噂に聞く夜討朝駈けらしい。 どぉ~もウエちゃんは『タクシー運転手関係の事件はこの人へ聞けリスト』…に入っているらしい。 作家の藤本義一さんは 『タイガース絡みリスト』に入ってると言う、難波利三さんは『通天閣周辺事情』、『ど腐れ国会議員や役人ネタ』は中村鋭一さん とリスト分けしていると言う。 …と言う事は、わしゃ~、タクシー業界評論家かぁ? しゃあけど夜中にeメールの着信と電話をガンガン鳴らされてると、心身ともにヘトヘトである。 夜討朝駈けを毎日繰り返される代議士センセが体調を崩して入院すんは当然でんなぁ。 ほんでも、十勝・根釧地区選出のあのセンセはタフですなぁ。やってはる事は感心しまへんけど、あの体力と根性には感心します。
この青森のアホ馬鹿タクシー運転手のおかげで、ウエちゃんが当初予定していた原稿は全て差替えである。どないしてくれんねん! 強盗に入ってガソリンを撒いて放火。多数の死傷者を出す殺人。検察の求刑は誰が考えても死刑である。 判決も9分9厘死刑判決であろう。こんな事件があると死刑廃止論者は突然に貝になってしまう。 火付けは市中轢き回しの上、獄門磔(はりつけ)の磔刑(たくけい)と相場は決まっている。 この男、人殺しをした翌日からも平気な顔で十ヶ月以上もタクシー運転手をしている。 タクシー業界やタクシー運転手に対しても信用を失墜させた業務妨害である。 ワイドショーを見ていると「中学生の子と奥さんが可哀想だ!」…と言う世間知らずの馬鹿タレントがいる。 なにを言うてんねん!殺された人の家族はもっと可哀想なのが解からないのか! 本末転倒はこの事である。ウエちゃん、怒った!
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●ウエちゃん
タクシー運転手と文筆の二足の草鞋を履く大阪のタクシー運転手 著書・・・ 『笑う運転手/ウエちゃんのナニワタクシー日記』 『国道の西、夜明けのミナミ/ウエちゃんのナニワタクシー日記』 (両著とも…本の雑誌社より刊行)
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