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昨年の夏の終わりである。とあるタクシー業界の重鎮から、 「トラモンドで4ヶ月だけコラムを書いてくれないか?」 と言う依頼があった。 トラモンドと言うのは東京交通新聞と肩を並べる日本屈指のタクシー業界誌である。 トラモンド社が発行するタクシー業界誌の『トラモンド』は毎週月曜日と木曜日にB5版約40ページ建てで、 全国のタクシー業界の裏の話題、表の話題を隠す所なく、ありのまま正直に伝えている勇気あるタクシー業界誌である。 トラモンド社から仲介を受けた依頼者はタクシー業界の重鎮である。断る理由が見つからない。断ると後々恐ろしい! タクシー業界の話題なら何をどう書いても『OK』という約束で、原稿用紙3枚程度を9月から12月までの4ヶ月間の『回転木馬』と言う連載コラムを震えながらお引き受けする事にした。 このトラモンド社の『トラモンド』は別冊を含めて執筆者が凄い。著名・有名人ばかりである。 大手新聞社の論説委員、大学教授、著名川柳作家、タクシー会社社長、等々。ビックリするような人達ばかりである。 ウエちゃんが好きな元・産経新聞経済部長/元・大阪新聞社長で現・激辛経済評論家の佐藤一段さんもコラムを寄稿していた事がある。 最新のトラモンド別冊では催洋一、呉智英、三枝成章、村松友視、堤尭、三浦朱門、ひさうちみちお、河瀬直美、長新太、等々と強烈な人達がタクシーに絡んだコラムを寄稿している。 こんな凄いタクシー業界誌であるが何故かタクシー運転手の殆どがこの雑誌の存在を知らない。 トラモンドは日本のタクシー会社の殆どが業界の動向を知る為に必ず定期購読をしている。一部では労働組合も定期購読をしているところもある。 しかし、角兵衛獅子の獅子のように厳しい労働条件で働かされているタクシー会社の運転手は『トラモンド』と言う言葉さえも聞いた事が無いのが現実である。 某地方の、とある会社ではこの雑誌を社長室の机の隅に隠していたという。 某地方のタクシー会社に勤務するウエちゃんの知り合いは、 「ウエちゃんのコラムを見たいのでトラモンドを見せてくれ!」 と言っただけで鍵のかかった部屋に連行されて、 「何故、トラモンドを知っているのか?執筆者(ウエちゃん)とはどういう間柄なのか?」 と厳しく詰問され、無線配車や貸切予約配車の待遇が悪くなったと言う。 信じられないが本当の話なのである。1950年前後に日本の労働者に吹き荒れたレッドパージを彷彿させる。 どうもタクシー業界誌『トラモンド』はタクシー経営社にとっては、タクシー運転手が読んではいけない禁断の書らしい。 そしてウエちゃんはタクシー運転手にはあまり知られていないが、タクシー経営者にはよく知られた存在らしい。 下記に『トラモンド』に連載したウエちゃんのコラムの一部を、大幅加筆削除修正して転載します。 もし「そんなタクシー業界誌なんか読んだ事が無い!」…と言うタクシー運転手さんがいましたら一度、個人定期購読をしてみて下さい。 オモロイでっせぇ~~!アナタの会社の、組合の悪行が……!?
ウエちゃんはタクシー運転手をやりながら夜な夜な朝までパソコンに向かいモノ書きをやっている変な運転手である。今はインターネットサイトに超辛口タクシーコラムを書いている。 この事があまりにも珍しいのでよくプレス取材を受ける。 「おうちぃ(お宅)、モノ書きで飯が食われへんさかいにぃ、タクシー運転手をやってはりまんのかぁ?」 と言う質問が多いのには閉口する。 はっきり言ってそれは違う。タクシー運転手だけでは飯が食われへんさかいにモノ書きになったのである。そこんトコを間違えんといて欲しい! 『WEB本の雑誌』と言うWEB連載で人気者になり単行本を出してからは、 「タクシー運転手の分際で!」 「タクシー運転手のクセして!」 「タクシー運転手如きが!」 と言う陰口が聞こえて来る。 ウエちゃんはまだ四十五歳だが千軍万馬の人生を送って来た。だから、出る杭を打たれ陰口を宣われても全然気にしない。 しかしやっぱり『分際で!』『クセして!』『如きが!』という言われ方には多少引っ掛るものがある。 だが周りの売上第一主義、親切丁寧看板だけのタクシー会社やタクシー運転手の素行悪行を目の当たりにしていると一言も言い訳ができないのである。 巷には『仁』 『義』 『礼』 『智』 『信』 『忠』 『孝』 『悌』の八ッの徳を忘れてしまった 『亡八タクシー運転手』があまりにも多すぎる!タクシー会社もタクシー運転手にも八ッ全部とは言わへんけど、 せめて五ッでもえぇから徳を思い出して欲しいもんやねぇ。徳俵で踏ん張っておまけして、三ッぐらいでもかまへんねんけど…。
夏の暑い日に教養高いラジオをウトウトしながら聞いていた。大阪では有名なフリーアナ(アナ)と某有名タレント(某タレ)の会話が聞こえてきた。 アナ 「君ぃ、夏休みどないすんのん?」 某タレ「パリに行くねん!」 アナ 「パリぃ~!本気かいなぁ?」 某タレ「えぇ~、なんでやのん?」 アナ 「アホかぁ!夏のパリはみんなバカンスに行ってホテルやレストランで働いてるんは夏だけの出稼ぎ従業員やから、サービス悪いでぇ!」 某タレ「嘘ぉ~!知らんかったぁ!」 アナ 「あんなぁ!欧州人の夏はみぃ~んな、バカンスに行ってやでぇ、自分の国には殆どいてへんねんでぇ!」 某タレ「全然知らんかったぁ~!」 アナ 「タクシー運転手ゴトキでもバカンスに行くねんでぇ!」 某タレ「えぇ~!タクシー運転手でもバカンスに行くん?信じられへん!」 ありゃまぁ!ちょっと教育的指導が必要ですよね?タクシー業界の味方のウエちゃんは早々に某放送局へ優しく抗議の電話です。 「あのぉ~、斯く斯く然然云々でんねんけど、なぁ~んかおかしぃ~事はおまへん?」 「全然!どこがぁ~?」 「エッ!ほんでもぉ~。」 「おうち(あんた)、何処のタクシー会社やねん?名前は?タクシー券はどこやねん?」 「はぁ~、なんでぇ?」 「あんたとこのタクシー使わんように社内メール出すわ!それでも、えぇのん?」 これはもう噂の覆魔御殿で名を馳せた民間版の官尊民卑なんとちゃう? 「いや、あの、その、はの、ほの…!」 ちょっと弱気を見せたウエちゃんに放送局のオッサンは鞭打つように、 「あんたらが毎日、新大阪駅や伊丹空港でやってる乗車拒否や客引きの事を放送でみんなに聞いて貰らおかぁ?局内にも被害者が仰山おるでぇ!どないやねん!」 と流石関西、極道丸出しの口調で迫って来る。気が弱く大人しい私は何も言えません!これもそれも素行が極めて良好健全なタクシー運転手さん達が街に溢れ返っているからである。
所用で東京に行くとよくタクシーに乗る。知人とちょっと話をするのに郊外型のファミリーレストランをよく利用する。 そんな時に耳に聞こえてくる東京のタクシー運転手が平気で使う、気になって仕方がないタクシー運転手用語だ。 「さっきの客はさぁ、ゴミだぜぇ!ゴミ!乗って来るなよぉ!ゴミなんか!」 賞罰身元不明のタクシーに、わざわざお金を払ってまで乗って戴いているお客さんを捕まえて、ゴミ扱いはないんとちゃいますかぁ?東京の運転手さん!
とうとう、あの日が嫌がおうでも迫って来た。もぉあと少しでタクシー業界における産業革命か文明開花(かなぁ…!?)のタクシーの規制緩和である。 …と言うウエちゃんも、規制緩和で何が一体どう変わるのか今一つ解らない。しかし、間違いなく始まると予想されるのがタクシー運賃のダンピングや切り崩しだろうとは素人でも想像できる。 ウエちゃんの手許には今から73年前の昭和3年(1928年)、梅雨6月前後の大阪の某新聞社のコピーがある。 この年の大阪も大不況で、梅雨は雨が降り止まず大阪の彼方此方で水が出ている様が手に取るように新聞から読取れる。 6月27日の社会面の大見出しは梅雨の大雨の災害記事を端に押し退けて、 『五十銭タクシーは結局不許可の運命か』(血みどろな料金競争を再現すると)…とある。 又、同紙面の隅には『五十銭反対/円タク大会』(豪雨で気勢を殺がれ)…とある。 この一ヶ月ほど前の5月には大阪のタクシー業界ではどこまで乗っても一円均一の円タクに対して、 料金半額ダンピングの五十銭タクシーが華々しく登場して大阪市民を驚かせた。円タク運転手は客を取られると怒り狂い、 各社新聞報道はこれを幸いにと、こと可笑しく大袈裟にダンピングタクシーの事を書いている。 タクシー業者にとっては勝手に広告費もかけずに書いてくれるのだから、 こんなに都合がいい事はない。おまけに、状況を新聞でしか把握できない大阪市民の強力な後押しがある。 なんか、70年以上経った今の時代と変わっていないのではないか?図書館の奥の埃にまみれた棚ででこの記事を初めて見た時は不覚にも笑ってしまった。 確証はないが昭和初期の一円は今の一万円ぐらいではないかと人づてに聞く。 一万円のタクシー料金が五千円にダンピング!高級な乗り物の円タクとは縁がない当時の大阪市民にとっては有り難い話しだ。 しかし、他社の円タク運転手にとっては迷惑な話である。 肝心の半額運賃ダンピングの五十銭タクシーはどうなったか?…ですかぁ。皆さんも一度、近所の図書館に足を運んで古い新聞を捲ってご自身で調べて見て下さい。 運輸・交通行政は70年経った今も昔も変わってまへん!
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●ウエちゃん
タクシー運転手と文筆の二足の草鞋を履く大阪のタクシー運転手 著書・・・ 『笑う運転手/ウエちゃんのナニワタクシー日記』 『国道の西、夜明けのミナミ/ウエちゃんのナニワタクシー日記』 (両著とも…本の雑誌社より刊行)
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