|
タクシー運転手をしておりますと、ほんとに様々なお客様との出会いがございます。そしてまたタクシー車内という狭い空間でいろいろな会話や行動が展開するのでございます。他の交通機関には見られない光景のように感じているのです。 そこで今回は乗務中にありました特に印象に残った三つのシーンをお伝えいたしましょう。
『いい日、旅立ち』 お日柄がよろしいのでしょう、今日は会社の近くのウエディングビレッジで数組の結婚式があり多数の方が参列いたしました。このビレッジはとても素敵な式場でして、どこか西欧を感じさせる雰囲気と、とても心のこもった接客のスタッフの方々に加えお料理も評判なのです。 この日の夕方この式場から新郎、新婦が正装でお乗りになり二次会場までお送りしたのです。特に新婦さんの純白のウエディングドレスが印象的でした。 ところが二次会場に着いた時、新郎さまがタクシーのトランクに入れた荷物運びに忙しく新婦さまが、なかなか降りれません。 そこで私、気をきかせドアーを開けドレスの裾が汚れないように手で、そぉつと持ち上げお手伝いしたのです。新婦さんがそろりそろりと歩き出します。その後ろから裾を持ち、かがみこんだ姿の白い手袋をしたタクシー運転手。妙な光景に道ゆく多くの人々の視線が集まったのです。 でも無事、新婦さまを会場までご案内できたのでした。 お二人の幸多かれと心でささやきながら・・・。
『えっ〃こんなこと、本当に・・・』
昼下がりの頃に五十才前後の白髪の紳士が駅からお乗りになりました。 「眠い、眠い」 とさかんに云っておられたので 「午後の、このころは眠いですよねー」 「いや、夕べは徹夜にちかい仕事でねぇー」 「それは大変でしたね」 「うん、そうなんですよ。大の男を何十人も検査したもんだから、それも夕方6時に始まって終わったのが夜中の2時ですよ」 「男の人の検査ですか。それって何なんですか」 「うん、〇〇省の健康診断でね。これ毎年、私の〇赤がやるんですが、受ける人は皆、裸になって(全裸)並ぶんですよ。」 どうも、この方〇赤のお医者さんのようでした。そしてこの検査の内容を聞く限りでは、とても具体的にここに書くには余りにも凄すぎましてサワリ程度にとどめます。 基本的には「男性自身」の検査のようでして前立腺や性病の検査など四項目だそうでして二項目につきましては、ご想像下さい。この検査のいづれも「触診」とか云うそうですが、とてもリアルすぎまして今一つ真偽のほどは分かりません。昔の映画で見た兵隊さんになるための「徴兵検査」を想像したのです。国を守るお仕事に従事される人がこのような検査をされる事を始めて知ったのですが・・。
『昼下がりの秘め事』
お昼近くでした。駅から40代のぷりんプリンとした和服姿の熟女タイプの方がお乗りになりました。 「国立・府中インターまでお願いします」 とても上品な話し方で申されました。発車して間もなく 「インターチェンジでお待ち合わせですか」 「いぇ」 この言葉で何か聞いてはいけないことを聞いてしまった感じがしたのです。と、いうのはこのインターの近くにあるのは運送会社の物流センターか、あとはモーテルしかないのです。一般的にはモーテルへ行かれる人は行き先をアバウトに云います。最初からモーテルに行くとはまず云いません。この熟女の方、ご乗車中はなんとなしに落ちつかないご様子で、何か秘められたものがある感じだったので、私も無言でいたのです。十数分でインターの近くまで参りました。 「あのー、どちらにお止めいたしましょうか」 「ラークヒルズなんですけど・・・・・・」 さぁー困りました。私、この場所が分かりませんので会社に無線で聞いたのです。 無線オペレーター 「国立IC付近のラークヒルズですね、ビルか何かの名前ですかねぇー」 私 「えーあのー、あのー、あのーですね」 まさか私、お客様の感じからモーテルだとは云えませんよね。オペさんの反応を待ったのです。暫くして 無線オペレーター 「お待たせしました、えーもしかして、あれですか」 私 「あのー、たぶん、そのあれだと思うんですが・・・」 このようなやり取りで無線オペさんのナビで無事、熟女の方をモーテル「ラークヒルズ」までお送りしたのでございます。 いやーホントに疲れました。
|
●青岩 隆
1940年生 東京立川市在住 高校卒業後サラリーマンを経て事業を起こす ガソリンスタンド、アパレル会社の経営 現在は食品催事業の傍ら定時制タクシー運転手 まぐまぐ / たまりば 両サイトにて「タクシー運転手からの内緒話」発行中
|
|